日本には、おそらく1700を超えると思われる学会がある。情報通信関連では情報処理学会をはじめとして、電子情報通信学会、経営情報学会、日本情報経営学会、日本社会情報学会、さらには特定分野の日本医療情報学会、システム制御情報学会、教育システム情報学会、農業情報学会など、数10の学会が活動している。
それぞれのWebサイトには専門とする学術の発展と、社会に寄与する目的が謳われている。しかし、例えば情報システムのトラブルが社会的な問題になった時に、分析や解決に参画する学会人の姿を見ることがまずないのは、いかがなものか。もちろん学会としてコメントを発表するケースはあるが、学会の専門家が解決に招聘されるわけではない。
他の学問領域はどうか。地震によって大きな津波の被害が生じた際には、世界的な津波の権威である筆者の恩師がテレビで解説した。大学を退官されるような年齢でも、その知見を求めて引っ張りだこである。交通でも医療でも環境でも、社会的な影響が大きい事象が発生すると、やはり専門分野の教授や学者が対策に当たる。
なぜ情報通信分野に関しては、学会が身近に感じられないのか。高度な情報通信技術者の育成が叫ばれ続け、欧米やアジア各国との取り組み格差が話題になる中で、学会は何をしているのか。そうした実務分野と学会の乖離感が、いつも気になっていた。
内側からみた学会の課題
縁あって、実際に情報関連の学会に参加してみた。大学人の論文発表の場になりがちな傾向は、どの分野の学会にも共通だが、情報関連の学会の特質は、企業人や学生の参加が少ないことである。企業人もベンダー側の人は見受けられるが、ユーザー側の人になると皆無に近い。研究テーマについては時流のものを取り上げながら、成果をまとめるまでの期間が長く、進展速度の著しい情報通信技術とはスピード感が異なる。全国大会であっても参加者が少なく、対外的な情報発信力も弱い。そのような学会の印象を中核メンバーに伝えると、「それが最も大きな学会の課題なのです」と、おっしゃる。
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