[イベントレポート]

オラクル、ハード/ソフトを最適化した「アプライアンス」に軸足、ゼロベースで開発した業務アプリも投入間近に

Oracle OpenWorld 2010(2010年9月19日〜23日)、米サンフランシスコ

2010年11月1日(月)川上 潤司(IT Leaders編集部)

今回の話題製品は何なのか−。初日の夕刻に予定されたラリー・エリソンCEOによる基調講演で、彼の口から肝いりプロダクトが披露されるに違いない…。そんな思いで多くの参加者が会場のモスコーニ・コンベンションセンターに向かったはずだが、氏が登壇するホールの入り口付近には開演を待たずして、とあるハードウェアが大々的に設置されていた。

ラリー・エリソンCEO 写真1:会期中、ラリー・エリソンCEOは2度の基調講演をこなした。その会場は常に満席。所定時間を大幅に超過しても熱心に語り続けた

 ぱっと見た感じはデータベースマシンのExadata。しかし、よく見ると「Exalogic」なる製品ロゴがあしらわれている。

 ということは、アプリケーションサーバー「Weblogic」が搭載されたアプライアンスマシンということなのだろうか……。やがて始まったOracle OpenWorld 2010の基調講演でその概要が明らかになった(写真1)。

肝いり製品はExalogic

あらためて紹介された製品名は「Oracle Exalogic Elastic Cloud」。買収したサン・マイクロシステムズの技術が詰まったハードと、オラクルのミドルウェア群を一体化している。

ハード面では、1ラックの中に、6コアのx86プロセサ(2ソケット)を搭載したサーバーノードを最大30台収容できる。40TBのディスクストレージや960GBのSSDストレージも内蔵。I/Oまわりは40Gビット/秒のInfiniBandだ。ソフト面では、アプリケーションサーバーのWebLogic、インメモリー処理制御のCoherenceなどのミドルウェアなどを、あらかじめチューニングした状態で実装。Oracle VM上でSolarisまたはLinuxが稼働する構成となる。1ラックの場合、HTTPリクエストは1秒あたり100万回こなし、従来の12倍に相当する処理能力があるとする。

ユーザー企業に対して、プライベートクラウドを想定した、ハイエンドのアプリケーション実行環境として訴求する。ハード(サーバーやストレージ)とソフト(OSやミドルウェア)、ネットワークまわりを個別に調達してシステムを構成する場合、さまざまな設定やチューニングが不可欠で、安定した実運用には相当の手間がかかる。構成が複雑になるほど、障害時のトラブルシューティングもやっかいだ。こうした課題を一掃するソリューションとしてExalogicを位置づける。導入後、何らかの脆弱性が発覚してソフトを修正する必要が生じた際には、どのユーザーも1種類のパッチを随時適用するだけで済むようにするという。

価格はフルスタックで100万米ドルを超える。最大8ラックまでスケールアウトできることを売りとするが、ユーザーは随時ラックを追加購入することとなり、これが「Elastic」な柔軟性と言えるかは疑問符が付く。

Fusion Applicationsの概要

もう1つ、OOWで話題をまいたのがFusion Applicationsである(画面1)。同製品は、オラクルが5年以上かけてゼロから開発したSOAベースの業務アプリケーション群だ。財務会計、購買調達、プロジェクト管理、人材、顧客関係管理、サプライチェーン管理、内部統制などのカテゴリで、100以上のモジュールを提供する。ワールドワイドで2011年の第1四半期に一斉にリリースする予定だ。

Fusion Applications のデモ画面の一例
画面1 Fusion Applications のデモ画面の一例。BIとソーシャル機能が組み込まれている

「BI(ビジネスインテリジェンス)指向、そしてソーシャル指向であることが最大の特徴」(エリソン氏)という。Fusion Applicaitonsにアクセスすると、そのユーザーが関与する業務の最新状況がダッシュボードにグラフィカルに表示される。

あらかじめ定めたしきい値を逸脱するなどして、何らかの意思決定を下す必要がある場合、その判断材料になる業務データや社内外の人脈図といった「今必要となる情報」が都度、画面に自動表示される。状況によってブレークダウンし、より詳細なデータを確認することも直感的な操作でできる。

アプライアンスを主戦場に

マーク・ハード氏 写真3:米ヒューレット・パッカードの前CEOで、オラクル社長に就任したマーク・ハード氏も壇上に

オラクル製のビルディングブロックを組み合わせれば、合理的に企業システムを完成させられる──。端的に言えば、これがオラクルのメッセージだ。

今回のOOWでは、至る所で「Hardware and Software. Engineered to Work Together」と掲げていた。

DBに始まり、その後は業務アプリケーションや各種ミドルウェアに領域を広げつつ、成長軸を作ってきたオラクル。サン買収完了でハードウェアにも手を伸ばした同社が今描いているシナリオが、ハード/ソフトを最適化したアプライアンス領域での足場作りだ。

昨年のExadataに続き、今回はExalogicを投入した。基本戦略を定めた暁には矢継ぎ早に製品展開するオラクル。来年を待たずして“Exaapps”なる業務アプリケーションアプライアンスが登場するかもしれない。(川上潤司)

表 Oracle OpenWorld 2010 での主なトピック
製品 概要
Exalogic Elastic Cloud アプリケーションサーバーなどを実装したアプライアンス
Exadata X2-8 OLTP用途も視野に入れたデータベースマシンの最新版
Fusion Applications SOAに対応しJavaで開発した業務アプリケーションスィート
Oracle Linux 安定性を重視した「Unbreakable Enterprise Kernel」を実装
Solaris 11 継続的強化を強調。2011年に次期版をリリースすると公表
SPARC 16コアの新RISCプロセサT3を発表
Java デスクトップ、サーバーサイド、モバイルなどで継続的強化
MySQL 5.5 大規模データの処理などの機能を強化
関連キーワード

Oracle / Exadata / アプライアンス / Oracle Database / Exalogic / Solaris / WebLogic

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