[技術解説]

技術進歩がもたらす「BI新時代」の幕開け─現状把握から将来予測へ、高速分析で意思決定を支援

「情報分析」と「行動」を直結させるBI Part1

2011年2月1日(火)IT Leaders編集部

ここ1〜2年、高性能のDWHアプライアンスやインメモリーDBといった技術が続々と登場し、 企業内でペタバイト級のデータを扱えるようになった。これに伴い、データ活用の姿が変わろうとしている。 経営層や現場担当者を含むユーザーが、共通のデータソース上にある膨大かつ新鮮なデータを様々な切り口で分析。 そこから得た知見を、業務上の意思決定に即座に生かす。そんなBI新時代の幕開けである。

ビジネス環境が変化する兆候をとらえて次の一手を打つ。そのための強力なツールとして、BI(ビジネスインテリジェンス)に再び注目が集まっている。「BIに対する関心は高い。具体的な製品を指名して提案を依頼してくる企業も多い」。こう話すのは、CognosやBusinessObjectsといったスイート製品のほか、ActuateやPentahoなどOSSを用いたBIシステム構築を手がけるPro-SPIREの尾崎克孝執行役員 サービスインテグレーション事業部長である。

尾崎氏はさらに、ユーザー企業のニーズの変化について「従来、BIは売上や仕入れといったデータを抽出して定型帳票を作成し、『何が起きたか』『なぜ起きたか』といった過去を見る用途がほとんどだった。しかしここ1年は、『何が売れるか』や『どこに経営資源を投資すべきか』といった仮説を得るためにBIを導入したいという引き合いが増えている」と語る。アクセンチュアの後藤洋介パートナーは、BIの方向性を「レポーティングやダッシュボードといった現状把握型の既存機能に加えて、データマイニング技術による将来予測を取り込み、ビジネスアナリティクス(BA)へと発展していく」と見る。

ゴルフダイジェスト・オンラインの取り組みは、その先駆けである。同社は今、企業活動における問題の発生や予兆を素早く把握する「クイックPDCA」の実現に向けて、BIを導入中だ([node:3310,unavailable="Part 2(2月8日公開予定)"])。

リアルタイムに近づく分析スピード

こうした動きの背景には、競争がし烈さを増す中で、少しでも顧客サービスの向上や競争優位につなげたいという、ユーザー企業の切実な思いがある。「コストダウンは今後も必要だが、それだけでは限界。売り上げや利益の増加につながる施策が求められている。そのためにあらゆるデータを分析し、経営的な価値を生み出していく必要がある」(アクセンチュアの後藤氏)。

これをITの進化が後押しする。DWH機能に特化して性能向上を図ったアプライアンス機やインメモリーのデータ処理技術、Hadoopに代表される大規模データの分散処理技術などだ。これにより企業が収集・蓄積しながらも、システム性能の限界から活用しきれずにいた膨大なデータを分析できるようになった([node:3311,unavailable="Part 3(2月15日公開予定)"])。「こうした最新技術を使えば、システム性能は従来の数十倍に跳ね上がる。今までは月次や週次でバッチ処理していた分析を、毎日実施できるわけだ。担当者は、より鮮度の高いデータを業務に生かせるようになる」(ガートナー ジャパン リサーチ部門の堀内秀明バイス プレジデント)。

中堅企業へのBI普及も加速しそうだ。米国では、SaaSやOSSといった技術を利用して、より手軽かつ安価にBIを利用するユーザーが増えている([node:3312,unavailable="Part 4(2月15日公開予定)"])。

言うまでもなくBIは90年代からの“古い”IT課題だ。しかし今日のBIは生き残りをかけた真剣勝負のためのツール。データガバナンス体制の確立も含め、BIに本腰を入れて取り組むべき時が到来した。

“分析力”が競争優位の源泉に

後藤 洋介氏
アクセンチュア インフォメーションマネジメントサービス グループ統括 パートナー


米国では“分析力”をてこに業績を伸ばす企業が増えている。カリフォルニアワインを製造・販売するE.&J.ガロは、高級ワインの成分を徹底的に分析。同じような成分構成の製品を低コストで製造し、大成功を収めている。カジノチェーンを運営するハラーズは、ハイローラー(上客)の店内での行動を分析。その結果、従業員が10分に1回ほほえみかけると満足度が高まり、さらにプレイを続けることを突き止めた。

その米国で注目を浴びているのが、複雑な統計モデルに基づき、未来に何が起きるかを予測する将来予測型BIである。これまでのBIは、過去に何が起きたかを振り返る現状把握型にとどまっていた。

といっても、現状把握型BIが役目を終えたわけではない。将来予測型BIに基づいて実施したキャンペーンの結果検証や、予測モデルを構築するための因子の発見には、現状把握型BIを用いた過去データの分析が不可欠である。今後は、現状把握型BIと将来予測型BIを両輪にした“ビジネスアナリティクス”が企業における情報活用の新しい姿になっていくだろう。 (談)

現場主導と全体統制のバランス感覚を

堀内秀明氏
ガートナージャパン リサーチ部門 アプリケーションズ マネージング バイス プレジデント


ユーザー部門の情報活用に対する意欲は高まっている。テクノロジーの進展で、鮮度の高い情報を現場で活用できる“オペレーショナルBI”の素地が整いつつあることが1つの背景だ。今後は各業務プロセスにBIが取り入れられ、現場の判断を支援する仕組みとして必然となっていくだろう。

こうした現状にIT部門はどう向き合えばよいのか。まずは技術的な観点からオペレーショナルBIが有効な手段であることを、経営層に対して説明することが必要だ。バッチ処理ではなくほぼリアルタイムで情報を活用できる点を訴求し、プロジェクトに新たな価値を提案することも大切である。

一方では、現場主導が度を過ぎないように目を光らせ、組織全体を統制する取り組みも重要である。今後はIT部門を通さずにクラウドからシステムを調達するケースも起こり得るだろう。IT部門はセキュリティなどの観点から各部門のクラウド活用を監視/制限しなければならない。ただし、企業の競争力が低下しないよう、適度な妥協点を模索すべきだ。ケースに応じて容認することが、今後のBIシステムを構築する際には求められるだろう。 (談)

関連キーワード

BI / BusinessObjects / Cognos / Pentaho / Actuate / DWH

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