ネットワールド、アシスト、富士通、日本HP データがクライアントに残らない、セキュリティパッチを一括適用できるなどの理由から、シンクライアントの導入を検討する企業が徐々に増えている。クライアント環境のセキュリティを強化できることを評価する声が多いが、それ以外にもBCP対策やクライアント管理を効率化できるなど様々なメリットが見込める。
しかし一方で、シンクライアントはPCに比べて非力、拡張性が低いために利用シーンが限られるなどのデメリットが顕在化しているのも事実だ。
そこでこれらシンクライアントのイメージを払拭し、パフォーマンス向上や用途の多様性を訴求する製品が、ここ1カ月で相次ぎ登場した。
メモリー活用で起動を高速化
転送量を最適化する製品も
ネットワールドが2012年2月7日に発表した「Atlantis ILIO Diskless VDI」は、VMware ViewやCitrix XenDesktopで構築した仮想デスク
トップの起動を高速化するソフト。Windowsの起動時に必要なファイルをすべてサーバーのメモリー上に配置することで、起動時にストレージにアクセスしなくても済むようにした。一般的なPCの場合、Windowsが起動するのに30秒から1分程度かかるのに対し、「本製品を利用すれば11秒程度で起動する」(米Atlantis Computing社のマーケティング・ディレクター セス・ノックス氏)。なお、アプリケーションやデータはストレージに格納する。
大容量のメモリーを搭載可能なシスコシステムズのサーバー機「Cisco UCS」とセットで提供する。メモリーの搭載容量が512GBとなる「Cisco B230 M2 Blade」の場合、160のデスクトップイメージを格納できるという。
価格はシスコシステムズのサーバー代を含む場合で、1ユーザーあたり6万円程度を予定する。ソフトのみの場合は、25人分のライセンスを含む場合で26万2500円(税別)。
アシストが1月19日に発表した「PowerTerm WebConnect(日本語版)」は、デスクトップの画面転送用プロトコル「RDP(リモート・デスクトップ・プロトコル)」を用いた通信を高速化するソフト。「Ericom Blaze」と呼ぶソフトウェア型のRDPアクセラレータを装備し、送信データを圧縮したり、最適化してネットワークの負荷を軽減したりすることで、データ転送を最大25倍高速化できるという。
価格(税別)は、WindowsやMac、Linuxなどのクライアントと、VMware vSphereやXenServerなどの仮想化ソフト上に構築したデスクトップ環境を接続する「DeskView」が9720円(指定ユーザーライセンス、10〜99人で利用する場合の1人あたりの価格)。
機能強化が進む端末
PCとそん色ない性能に
クライアント用端末に目を向けると、PC並みに高機能化し、幅広い用途を想定した製品が登場している。
富士通は2月8日、シンクライアントの新ブランド「FUTRO」を発表。第一弾としてデスクトップ型のシンクライアント「FUTRO S900」の販売を同日より開始した。
モニター接続用のインタフェースを標準で2本装備し、2台のモニターを同時接続するほか、無線LAN(IEEE802.11b/g/n)を備えることでLANケーブルが届かない場所でも利用できるようにした。
指紋認証や手のひら静脈認証を使ってWindowsや業務システムにログオンできるオプション製品を用意するなど、セキュリティにも配慮する。価格(税別)は4万9000円から。
日本HPが1月17日に発表したシンクライアント「HP t5565z Smart Client」も、2台のモニターを同時に接続することが可能。最大解像度は2048×1536となり、画面上により多くの情報を表示させたいというニーズに応える。USB接続用のポートを6つ用意するなど、PCとそん色ない拡張性を保持する。価格(税込)は2万8350円。 (折川)