デルが企業買収を加速させている。ハードウェアの製造・販売を中心としたビジネスから、顧客企業の課題解決に軸足を置いた経営戦略にシフトするためだ。2010年以降の主要な買収企業をまとめた。
2009年、情報サービス大手の米ペロー・システムズを買収するなど、ここ数年、サーバーやPCといったハードウェアの“箱売り”からの脱却を進めている米デル。2012年に入って、シンクライアント大手の米ワイズ・テクノロジーを含む5社の買収を相次ぎ表明し、製品ポートフォリオの拡充をさらに加速させている。
背景には、サーバー分野における米オラクルの「エンジニアード・システム」などとの競争激化、PC分野ではスマートデバイスの台頭によるPCの成長鈍化、企業ユーザー視点に立てば複雑化するIT基盤に対し箱売りだけでは根本的な問題解決を図れない、といった要因がある。国内でもソリューション専門部署を設置、人員を増強するなど体制を強化中だ。
ではデルは具体的にどのような製品/サービスを拡充しているのか。最近の買収を中心にまとめた(表1)。
買収により製品群を拡充
顧客の多様なニーズに応える
2010年以降、4月初旬までに買収した会社は合計14社。バックアップなどのストレージ関連製品が目立つが、直近の買収で注目されるのはクラリティ・ソリューションズとメイク・テクノロジーズだ。クラリティは70人、メイクは100人と小規模だが、両社はメインフレームなどの旧資産をクラウドやオープンシステムへ移行したり、その際にアプリケーションをモダナイズ(最新化)するソリューションやサービスに強みを持つ。簡単にいえば、レガシーマイグレーションである。これらの買収で、システムの移行支援から移行先のハードウェアまでをワンストップで提供する体制を整える。
セキュリティ関連の製品/サービスも注目株だ。2012年3月にファイアウォールやUTM(統合脅威管理)、メールセキュリティなどのアプライアンスを販売するソニックウォールの買収を発表。2011年2月に買収したセキュアワークスが持つデータ暗号化製品や、2010年2月に買収したケース・ネットワークスのシステム管理アプライアンスとソニックウォールの技術を統合、機能強化を図る。
物理/仮想環境の一元的な運用を支援する製品も強化する。2010年7月に買収したスケーラント・システムズの運用管理ソフト「Scalent Infrastructure Manager」は、サーバーやストレージなどのプロビジョニング機能が特徴。デルの運用管理ソフト「Advanced Infrastructure Manager」に統合し、異機種のサーバーやストレージ、ハイパーバイザーで構成するシステムを効率的に運用できるようにする。
一方、冒頭で触れた米ワイズテクノロジーの買収も大きい。主力であるサーバーやPC事業の底上げにつながると見られるからだ。半面、ワイズが持つiPadなどのタブレット端末向け製品をデルがどうするのかは気になるところと言えよう。 (折川)