2020年を見据えた「グローバル企業のIT戦略」を取り上げる本連載。IT戦略における日本と世界の差異を見極めるための観点として、第1回から第6回までは、クラウドコンピューティングを中心にグローバルトレンドを見てきた。第7回からは、クラウドコンピューティングに並ぶ、もう1つの重要キーワードである「GRC(Governance、Risk Management、Compliance)」の観点から、グローバルトレンドを見ていく。今回はGRC編の最終回として、日本とアジアの成長力の差について考えてみたい。
GRC(Governance、Risk Management、Compliance)は、その言葉通りのリスク管理だけではなく、戦略による成長も意味している。GRCの“G”により、企業は成長していかねばならないのだ。企業が成長するためのキーワードは、「Globalization(グローバル化)」「Innovation(変革)」「Diversity(多様化)」の3つだ。しかし、日本と海外、特に日本とアジアを比較した場合、成長力に大きな差がある。日本企業は、この差を考慮したうえでグローバル化に取り組まなければならない。
成長力の源泉はハードとソフトの間にある差
世界一物価が高いと言われるシンガポールを筆者は良く訪れる。そして、そのたびに、いつも考えさせられる。港には東京湾を超える数の船舶が停泊し、街には日本と同等かそれ以上の豪華なビルが立ち並ぶ。そして常に新たな観光地が開発されている。ショッピングモールをみれば日本以上の人出で、旺盛な食欲と買い物を促している。この差は、どこから来るのだろうか。
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1つの確信に近い答えが筆者の中にはある。シンガポールでは、ビルや観光施設、ホテルなどのハードウェアと、人的なスキルやコンテンツなどのソフトウェアの間に大きな差があるのだが、このハードウェアとソフトウェアの差が成長力の源泉になっているということだ(図1)。ここで言うソフトウェアとは、単なるITのソフトウェアという狭い意味ではない。人材やコンテンツ、運用方法、R&D(Research & Development:研究開発)、各種のノウハウなど広義のソフトウェアである。Innovation(イノベーション)の種とも換言できる。
両者の差は、大きければ大きいほど成長につながる。だから同国は、ソフトウェアの質を上げるために外国人労働者を招き入れた。その数は既に労働人口の3分の1を超えている。
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