ネットで販売した商品を無人機のドローンで即配する──。米Amazon.comが2013年末から進めてきた計画が、実現に大きく近づくことになりそうだ。所管官庁の米連邦航空局(FAA)は米国時間の2015年3月19日、Amazon Logisticsに対し、研究開発用の無人機(UAS:Unmanned Aircraft Systems)と要員教育に関する耐空証明実験を許可したと発表したからである。
Amazonが無人機による配送サービスの計画を発表したのは2013年12月。「Amazon Prime Air」と命名し、注文した商品を30分以内に届けることを主眼に、早ければ2015年にも開始する予定だった。しかしFAAはなかなな許可を出さず、2014年7月にはAmazonが「FAAが無人機に関する規制を緩めなければ、関連する仕事や投資は海外で行われることになる」と、脅しともとれる声明を出していた。今回の許可(http://www.faa.gov/news/updates/?newsId=82225&cid=TW303)により、Amazonが拠点を置く米国ワシントン州でPrime Airの実用化に向けた実験を行うことになる。
ただし制約は少なくない。FAAは、(1)無人機の飛行は高度400フィート以下、(2)日中の黙視可能な時間帯で行う、(3)無人機の飛行はパイロットや観察者が目視できる範囲にする、(4)パイロットは自家用パイロット・ライセンスと医師の診断書を持つ、といった条件を出している。従ってAmazonのデポから数キロ離れた遠隔地に無人機を飛ばすといったことはできない。またAmazonは毎月、FAAにフライト数や操縦時間、ハード/ソフトの障害、航路からの逸脱や予期しない通信ロスの有無などを報告する義務もある。
一方、FAAはAmazonだけでなく、ハリウッドの映画スタジオなど無人機を活用する意向を持つ他の企業やグループにも許可を出している。ただし今のところは、すべて人が操縦することが前提。Prime Airの実用化に欠かせない自動操縦に関する許可を出すのか、出すとすればいつなのかに関しては言及していない。
なおAmazonは2014年12月から米ニューヨークの一部地域で注文後1時間以内に配達するサービス、「Amazon Prime Now」を開始している(7ドル99セントの追加料金が必要)。これは無人機ではなく、自転車を使うサービスだが、できるだけ早く届けることへの同社の熱意を示している。デジタルビジネス時代を先導するケースの1つとして注目する必要がありそうだ。