富士通は、Internet of Things(IoT)システムを容易に構築するためのソリューションとして、センサーやLSI、無線通信技術、ミドルウェアをパッケージ化した「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE(ユビキタスウェア)」を開発した。併せて、ユビキタスウェアを組み込んだ具体的な製品として、作業現場向けのウェアラブル端末「ユビキタスウェア ヘッドマウントディスプレイ」の販売を開始した。2015年5月11日、同社が説明会で発表した。
富士通はこれまで、携帯電話(スマートフォン)などの開発を通じて、センシング技術の応用ノウハウを蓄積してきた。ユーザーのシチュエーションに合わせて通話音量を最適化する「ぴったりボイス」、ウォーキング/ランニング診断、睡眠診断といったものだ。いずれも「人」を中心に据え、豊かさや安全性を具現化することに基軸をおいており、これら技術を「ヒューマンセントリックエンジン(HCE)」として体系化してきた。
「HCEによる人を中心としたセンシング技術に加え、指紋や手のひら静脈、虹彩などを使った生体認証、さらにはリモートデータ消去の『CLEARSURE』といった独自のセキュリティ技術を保有していることが、IoTにおける当社の強みとなる」──ユビキタスプロダクトビジネスグループ グループ長の齋藤邦彰執行役員常務は説明会の席上でこう強調した。
今回発表した「ユビキタスウェア」は、同社が培ってきたセンサー関連の技術や知見を汎用モジュール化して、チップおよびミドルウェアとして提供するものだ。具体的には「コアモジュール」と「センサー活用ミドルウェア」で構成する。
コアモジュールは、センサー(加速度、気圧、地磁気、ジャイロ、マイクなど)と、ヒューマンセントリックエンジンを搭載したLSI、Bluetooth Low Energy(BLE)対応通信機能をパッケージ化したもの。パルスセンサーやGPSなどのオプションも用意している。
センサー活用ミドルウェアは、コアモジュールから発せられるデータをクラウド側で分析・学習する役割を担う。センサーデバイスから収集したデータを元に人の行動パターンを分析し、転倒などの異常事態を検出するアルゴリズムを搭載した「センシングミドルウェア」、センサーデバイスから収集したデータを元に、設定した屋内外の範囲内で人や物の位置情報を提供する「ロケーションミドルウェア」を用意する。
ユビキタスウェアをベースに、富士通が提供するビッグデータ活用や統合認証、アプリケーション開発などのプラットフォームと組み合わせることで、目的に沿ったソリューション/サービスを構築できる。オープンな仕様となっており、他社のPaaS(Platform as a Service)やハードウェアなどと連携させることも可能だ。
同日に併せて発表したヘッドマウントディスプレイは、ユビキタスウェアの仕組みを、より具体的なシステムとして落とし込む上で役立つデバイスの一種という位置付けた。OSにはAndroid4.4を採用。0.4インチのディスプレイ、カメラ、マイク、各種のセンサーで構成された、片目・非シースルー形状のヘッドマウントディスプレイとなっている。
AR(拡張現実)統合基盤製品「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server」などのミドルウェアや、「FUJITSU Business Application AZCLOU SaaS teraSpection」などの業務支援サービスと組み合わせることで、画像や映像、音声による作業支援が可能になる。本体を頭部に装着して、作業手順や点検項目などの情報をディスプレイに表示、作業員は必要事項を確認しながら両手で作業するといったことができる。作業マニュアルのページめくりや数値入力、カメラ撮影などの本体操作は、腕に取り付け可能な、小型のウェアラブルキーボードや音声コマンドで行える。
富士通ではそのほかに、耳に装着したセンサーが眠気を検知するドライバー向けの眠気検知ウェアラブルセンサー「FEELythm」や、測位ソリューション用の「ロケーションバッジ」、現場作業員の安全確保のための腕時計型見守りソリューション「バイタルセンシングバンド」といったデバイス群を、ユビキタスウェア商品ラインナップに加えていく予定だ。