[真のグローバルリーダーになるために]

【第16回】海外の考え方は孫子の兵法「詭道」に沿っている

2015年8月21日(金)海野 惠一(スウィングバイ 代表取締役社長)

大型案件の競合相手である北京鳳凰の行動には何か裏がありそうだった。日本ITCソリューション課長の佐々木は、孫子の兵法の作戦篇の「速やかに事を進める」という一節も思い起こし、先方の総経理に会うことが最も優先度が高いと判断した。彼らは直ぐに行動に移し、北京鳳凰の蘇総経理に電話し、明後日には北京で会う約束を取り付けた。その晩、香港支社副社長の森山と佐々木は、19世紀の風情を残している広東レストラン「隆濤院」で食事を採ることにした。

 広東道の1881 Heritageにある広東レストラン「隆濤院(Loong Toh Yuen)」は、昼間は食べ放題の飲茶ランチがあり結構混んでいる。この日は18時も過ぎ、適当に空いていて、落ち着くことができた。世間話をしながら、食事も半ばになったころ、森山は佐々木に質問をした。

 「今回の『港鉄』の入札は、我が社にとって初めての海外現地企業の大口入札になります。これまでに集めた情報では、競合相手はきっと安値攻勢を仕掛けてくるに違いないと思いますが、佐々木さんはどう思います?」

 佐々木は丁度、蜜汁叉焼腸粉 (チャーシューのライスクレープ)を頬張ったところだったので、しばらく口をもぐもぐしてから、森山に答えた。

 「孫子についての考えを交えながら、この競争相手にどう対応するかについて話をさせてください」。佐々木は孫子について、1年以上勉強してきたので、ほぼ主要なところは諳んじていた。

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