2016年7月の3本:富士通と米Oracleがクラウド事業で提携/ソフトバンクが英ARMを3.3兆円で買収/宅配便を装う不審メールが急増
2016年8月4日(木)松岡 功(ジャーナリスト)
2016年7月のニュースから松岡功が選んだのは、「富士通と米Oracleがクラウド事業で戦略的提携」「ソフトバンクが英ARMを3.3兆円で買収」「宅配便を装う不審メールが急増」の3本である。
[選択理由]
まずは、日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)として過去最大となるニュースだけに、記憶にとどめておきたいところだ。さらに、ITに携わる人間としては、今回のニュースをただ「すごいね」と傍観しているだけでなく、孫氏が今後の照準として挙げたIoTについて大いに論議するきっかけにしたい。
IoTは今後、社会や企業にどのような影響を及ぼすのか、自社にとって生かせる術はないか、そもそもIoTとは何なのか−−。IT部門だけでなく、全社的にさまざまな形で勉強会など実施するのもいいだろう。それだけのテーマであることは、ITに携わる人間ならば承知の上なはずだ。
孫氏は、ARMの買収でソフトバンクがどう変わるかと問われて、「ARMはソフトバンクのコア中のコアになる。20年前にインターネットと言っている人はいなかった。10年後、20年後はまさにARMでありIoTであり、情報革命で生まれる(人間の知恵や知識を超えた)『超知性』がソフトバンクだと言われるようになる」と答えている。
ソフトバンクにとってリスクの小さくない“賭け”ではあるが、孫氏の発想には大いに参考になる点がある。
宅配便を装う不審メールが急増
宅配会社を装った不審なメールが送られているとの報告が2016年6月末から相次いでいる。複数の報道によると、ヤマト運輸の名をかたってコンピュータウイルスを送りつける手口が急増しており、同社に多くの問い合わせが寄せられている。佐川急便でも個人情報を盗み出そうとする不審メールが頻発している。両社は消費者に注意を呼びかけているが、被害を防ぐ決め手はなく、対応に苦慮している。
ヤマト運輸の名をかたるメールは、宅配便の配達予定日時を知らせる内容で、添付ファイルにウイルスが埋め込まれている。添付ファイルを開いてしまうと、ネットバンキングのIDとパスワードが盗まれる恐れがあるという。しかも差出人のメールアドレスが、ヤマト運輸が正規に利用しているアドレスを装っており、不審メールと気づきにくいなど、手口は巧妙である。
ただ、配達予定日時を知らせる正規のメールにはファイルは添付されていない。 ヤマト運輸ではホームページで添付ファイルがあれば絶対に開かないように注意喚起している(写真2)。
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[選択理由]
サイバーセキュリティの脅威が一段と巧妙化していることを物語る出来事であるからだ。筆者も、この不審メールを幾度も受け取った経験があるが、何とも不愉快だった。
宅配便の取り扱い個数は2014年度時点で、年間36億個を超え、1日平均約1000万個の荷物がやり取りされるようになった。宅配便を名乗る不審メールが増えてきたのは、社会生活に欠かせないインフラに定着した証しともいえる。完全な対策は難しいようだが、同様にインフラに関わる企業にとっては被害者だけでなく加害者にもなり得る事象なだけに、リスクを最小限に抑える手立てを考えておきたいところである。
筆者プロフィール
松岡 功(まつおか・いさお)
ジャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアでコラムや解説記事を執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)などがある。
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