シュナイダーエレクトリックのグループ会社の1社であるデジタル(本社:大阪市)は2017年7月4日、AR(拡張現実)技術を用いて生産現場での保守作業を効率化し人的ミスを削減するシステム製品「EcoStruxure Augmented Operator Advisor」(以下、シュナイダーARアドバイザー)を発表した。8月末から販売する。
ARとは、カメラで映した現実の映像の上に、あらかじめ用意しておいた映像や情報などのコンテンツを重ね合わせて表示するという手法によって、現実世界を分かりやすく拡張する技術である。例えば、工場設備の保守作業において、操作するべき箇所を示したり、操作マニュアルを参照させたりすることができる(写真1)。
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シュナイダーARアドバイザーは、ARデバイスとしてタブレット端末を使う。タブレットの背面カメラで電気キャビネットなどの工場設備を映すことによって、工場設備のイメージやARマーカーを認識し、これらにヒモ付けて登録しておいた操作マニュアルなどのコンテンツを表示する。
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具体的には、扉を開けることなく電気キャビネットの内部を確認したり、機器から収集したデータをもとに、保守すべき箇所を表示したりできる。動画やPDFなどの操作マニュアルや部品の資料を閲覧できる部位にアイコンを表示したり、注目箇所のアイコンに色を付けて目立たせたりといったことができる(写真2)。
ソフトウェアを個別に作りこむことなくシステムを導入できる。ソフトウェアは、タブレット上で動作するARアプリケーションと、工場内の各種機器のデータを収集して活用するためのHMI(Human Machine Interface)機器の上で動作するARサーバーのランタイムモジュールで構成する(画面1)。ARコンテンツの登録によって利用を始められる。最短で1カ月で導入できるとしている。別途要望に応じて、機能を作りこむことやカスタマイズすることも可能である。
シュナイダーARアドバイザーの主な狙いは、保守作業の効率化と人的ミスの削減にある。シュナイダーエレクトリックでIndustry HMI LoBバイスプレジデントを務める石井友亜氏(写真3)は、「保守作業に要する時間の50%はマニュアルなど情報の検索によって消費されており、工場設備が故障する原因の50%は人的ミスである」と背景を説明する。
価格は、タブレット上で動作するARアプリケーションと、ARサーバーソフトを組み込んだHMI機器で構成する最小構成パッケージで200万円から。当初は、タブレットとしてiPadが利用できる。後日、Android版とWindows版のARアプリケーションも追加する。また、ユーザーやSIベンダーが機能をカスタマイズできるようにするツールも後日提供する。