[イベントレポート]

「自律・自動化がサイバーセキュリティ脅威への本質的解決策」―エリソン会長、“自律データベース”Oracle DB 18cを披露

Oracle OpenWorld 2017

2017年10月4日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)

米オラクル(Oracle)は2017年10月1日(米国現地時間)、RDBMS「Oracle Database」の次期バージョン「Oracle Database 18c」と、新開発のデータベース運用管理自律化・自動化クラウドサービス「Oracle Autonomous Database Cloud」を発表した。最初のリリースとしてOLTPワークロード向けのエディションが2017年内、他は2018年6月以降に提供開始の予定。米サンフランシスコで開催中のOracle OpenWorld 2017の基調講演に登壇した、経営執行役会長兼CTOのラリー・エリソン氏みずからが「自律データベース」の投入背景や優位性を説いた。(IT Leaders 編集委員 河原 潤=サンフランシスコ)

自律データベースでダウンタイムを最小化しデータ窃取を防ぐ

 オラクルが自律データベースの開発に至った背景に、被害件数・規模とも増大する一方のサイバーセキュリティ事案への対策がある。データベースのような24時間・365日連続稼働するアプリケーションでは、セキュリティアップデートパッチが発行される度にインスタンスの稼働を止めてパッチを適用しなくてはならないが、「攻撃を仕掛けられたり、データを盗まれたりするのはまさにその時だ」とエリソン氏。そのうえ、昨今のセキュリティパッチの更新頻度から、パッチを当てる作業に相当な人手がかかっている。

写真2:Oracle OpenWorld 2017の会場、米サンフランシスコのモスコーニ(Moscone)センター

 「サイバーワールドを全面的に自動化することが重要だ。パッチ作業やシャットダウン、チューニング。DBAの作業は果てしなく、ダウンタイムの計画・周知にも時間を取られている。しかも、そうした人手作業やダウンタイムがまさにセキュリティリスクとなる。組織がデータ窃取を防ぐために本質的になすべきは自動化である」(エリソン氏)

 オラクルによると、Autonomous Database Cloudが対応する用途・ワークロードは、オンライントランザクション処理(OLTP)、データウェアハウス(DHW)、グラフ分析、部門アプリケーション、ドキュメントストア、IoT、混合ワークロードなどとなっている。冒頭に記したように、最初のサービスはDWHワークロード向けにチューニングされた「Autonomous Data Warehouse Cloud」が2017年12月に提供開始され、2018年6月にはOLTPワークロード向けの「Autonomous OLTP Database Cloud」、エントリー向けの「Autonomous Express Database Cloud」、NoSQL版の「Autonomous NoSQL Database Cloud」が順次提供される予定という。

「処理性能とコストの両面で凌駕する」打倒AWSを隠さないエリソン氏

 第1弾となるAutonomous Data Warehouse Cloudは、特定の競合クラウドサービスを明確にターゲットにしている。米AWS(Amazon Web Services)が2013年にリリースしたDHWクラウドサービス「Amazon Redshift」だ。高価格なオンプレミス製品が主流のDHW市場において、オンデマンド型のサービスと価格体系で登場したRedShiftは大きなインパクトを与えた。

 エリソン氏は壇上で、機能や可用性においてRedShiftの欠点を子細にわたって指摘した(写真3)。そのうえで、「Oracle Cloud」とAWSの両IaaS上で、Autonomous Data Warehouse CloudとRedShiftを稼働した場合のベンチマークをデモンストレーションしてみせた。

写真3:「Autonomous Data Warehouse Cloudは、AWSとのコスト比較で半分だ」。エリソン氏はたくさんのスライドを使ってAWSに対するアドバンテージを示した
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 図2のスライドは、金融業のワークロードを同時に走らせたベンチマークテストの結果だ。12のクエリを処理するのにAutonomous Data Warehouse Cloudは23秒かかり、RedShiftは247秒かかった。時間課金は前者が0.03ドル、後者が0.27ドルで9倍の差になっている。

図2:金融業のワークロードを用いた、Autonomous Data Warehouse CloudとRedShiftの性能・コストのベンチマーク結果(出典:米オラクル)
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 エリソン氏は、複数の稼働条件とワークロードで6、7種類のベンチマーク結果を示し、AWSへの対抗意識をむき出しにした。「ご覧いただいたように、パフォーマンスの差は一目瞭然で、コストが圧倒的に安い。しかも、自動化による運用効率性から人件費でも差が付くことになる。だから、本当の差はもっと大きくなる」(エリソン氏)

 もちろん、第3者機関が行う正式なベンチマークではない、オラクル自身が揃えた一定の環境・条件下における比較結果ではある。オラクルはこの一定条件下でのファクトを示しながら、DWHの価格破壊を起こしたRedShiftをはじめ、既存の主要クラウドサービスとの激しい顧客獲得競争に臨む構えだ。

 むき出しの対抗意識が最終的に、ユーザーにメリットを多くもたらすのなら歓迎すべきだろう(オラクルが競合と名指しするAWSは、ある種のユーザー至上主義で支持を集めているベンダーである)。それよりも、エリソン氏がセキュリティひいてはサイバーワールドの本質であると強調した、Oracle 18cでの自律・自動化のアプローチが、12月以降にリリースされる実際の製品・サービスで、どのレベルまで実現できていて、サイバーセキュリティ問題やDBA/DBプロフェッショナルの作業忙殺問題を解消できるのか(写真4)には注目せざるをえない。

写真4:「自律・自動化がDBA/DBプロフェッショナルを煩雑な作業から解放し、設計や分析など戦略的な業務にリソースを振り向けられるようになる」とエリソン氏は強調した
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