[インタビュー]
日本電産がセゾン情報との協業でIoTのクイックスタートを支援
2018年6月6日(水)川上 潤司(IT Leaders編集部)
日本電産がセゾン情報システムズとの協業の下、製造業を主な対象としたIoTソリューション「Simple Analytics」を市場投入したのは2018年3月のこと。ユーザー企業の情報システム部門が、自社のシステム構築や業務改革支援の枠を超え、社外に攻めて出ることになった背景にはどんな思いや狙いがあったのか。3人のキーパーソンに話を伺った。
――まずは「Simple Analytics」の概要について教えて下さい。
金嶋:ものづくりを生業としている企業にとって品質改善や生産性向上は永遠のテーマかと思いますが、実効性のある取り組みを進めるには、まずは現場の実態をしっかりと把握することが欠かせません。生産ラインの稼働状況や工程ごとの進み具合といったものです。ここで、IoTの技術を使って現場の動きを分かりやすく可視化することに重点を置いたのが「Simple Analytics」です。
もう少し噛み砕いて説明すると、生産設備をはじめとした“動き”をセンサーなどから収集し、データを一元的に蓄積・管理し、さらにしかるべき加工や分析をした上で、レポートとして分かりやすく見せる─これらを担うクラウド型のサービスです。単にデータ活用のプラットフォームを従量課金で提供するといった位置付けではなく、前段のコンサルティングもセットになっていて、「きっちり成果を出す」ことに主眼を置いています。
丸谷:製造業のIoT活用といっても幅が広いじゃないですか。我々がフォーカスしている「現場の見える化」もあれば、もっと先に進めばプレディクティブメンテナンスだったり、“as a Service”としての事業転換だったり。そうして夢は広がるものの、現実には「一体どこから始めればいいんだろう?」という悩みもまた尽きないんです。最初から大風呂敷を広げてしまうと迷走するリスクがあるし、大規模投資をして本当に回収できるのだろうかという懸念も払拭しきれない。だから当社としては、まずは分かりやすいところから始めましょうということでSimple Analyticsを世に送りました。
その意味では、ソリューション名にある「Simple」と「Analytics」では、Simpleの方に軸足があります。まずは基本となる所を素早く安価にやって、先々のことを考える地歩を固めましょうと。IoTの最初のハードルを下げて門戸を拡げる、それが当面の目標です。
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――日本電産さんも製造業ですから、このソリューションのルーツは社内用途にある?
金嶋:そうですね。ご多分に漏れず、当社でも「IoTの可能性を探るぞ、ポテンシャルがあれば積極的に改革に活かしていくぞ」ということになり、事業部門ごとに様々な試みが始まりました。PoC(実証実験)が本格化してきたのは2014年ころだったでしょうか。
情報システム部門としては、そのためのプラットフォームを用意しなければなりません。データを貯めて分析して見せるための汎用的な基盤です。ここで“データを貯める”という部分については「Green-Forest」という社内構築システムを持っていました。海外の拠点や取引先などと容量/形式を問わず様々なデータをやり取りすることを最初の目的として、クラウドテクノロジーを積極的に活用して開発したものです。実は外販もしてるんですよ。
プラットフォームを整えるにあたっては、このGreen-Forestを発展させ、足りない部分を新規に作り込む方針を掲げました。つまりはIoTデータの収集といったエッジに近いところ、もう一方ではデータの分析やレポーティングといったアウトプットのところの機能を強化・アドオンする形です。OSSやクラウドサービス、既存のソリューションなど、あれこれと検討を重ねることになりました。
丸谷:とりわけ悩んだのはIoTのデータのハンドリングの部分ですね。単にデータを取ってくるだけでなく、その際の確実性であるとか、分析などの後工程にうまく繋げるための工夫とかセキュリティへの配慮とか…しかも必ずしもネットワーク性能が恵まれていない環境でやりくりしなければなりません。いざ始めてみて分かる難しさがあったんです。そこで出会ったのがセゾン情報システムズさんでした。データ転送やデータマネジメントの領域で長年の実績を積んできているだけに、当方にはないノウハウや完成度の高い仕組みを既に持っておられたんです。
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