NTTと情報・システム研究機構国立情報学研究所(NII)は2019年5月25日、組み合わせ最適化問題を高速に解く手法の1つ「コヒーレントイジングマシン」の特性を評価する実験を実施したと発表した。コヒーレントイジングマシンは、ノード間の柔軟な相互接続によって、複雑なグラフ構造の問題を高い正答率で解くことが可能であることが分かったという。辺密度の高いグラフに対して、コヒーレントイジングマシンが量子アニーリングマシンを上回る正答率を示した。
本研究では、NTT物性科学基礎研究所および米国スタンフォード大学に設置されているコヒーレントイジングマシンと、米国NASAエイムズ研究センターに設置されている量子アニーリングマシンを用いて、様々な辺密度をもったグラフに対する最大カット問題の正答率評価を行った。
ノード間の辺密度の低いグラフに対しては、量子アニーリングマシンの正答率がコヒーレントイジングマシンを上回った。一方、辺密度の高いグラフに対しては、コヒーレントイジングマシンの正答率が量子アニーリングマシンを上回った(図1)。

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量子アニーリングマシンは、グラフの辺密度が高くなるにつれて正答率は低下していき、50ノード、辺密度50%のグラフに対しての正答率はおよそ0.001%となった。一方、コヒーレントイジングマシンでは、50ノードの辺密度の高いグラフに対しても数十%程度の高い正答率で最大カット問題の解探索に成功した。
この研究成果は、コヒーレントイジングマシンに実装されている測定・フィードバック法と呼ばれる仕組みが、多数の縮退光パラメトリック発振器の間に複雑なネットワーク構造を実装する基盤技術として有用であることを示す。より大規模な組み合わせ最適化問題を高速に解くイジング型計算機の実現に寄与することが期待できるとしている。
本研究成果は、2019年5月24日14時(米国時間)に、米国科学誌「サイエンス・アドバンシーズ」で公開される。なお、本研究開発は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の山本喜久プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として行われた。