NECは2020年2月21日、小売業界向けに、AIを活用した需要予測と、需要予測に基づいた自動発注が行えるシステムを提供すると発表した。さまざまなデータから客数や各商品の需要予測を行う。また、予測に基づいて発注業務を自動化することにより、発注業務の効率化・標準化およびロスや欠品の削減を支援する。なお、同システムは先行して、リオン・ドール コーポレーションが福島県を中心に展開するスーパーマーケットに採用された。千石店(同県会津若松市)で同年2月に稼働を開始し、今後は各店舗に順次展開する予定である。
NECが発表したシステムは、AI需要予測システム「DCMSTORE-DF」と、これを用いた需要予測型自動発注システム「DCMSTORE-EOB」で構成する。NECのAI技術の1つである「異種混合学習」を活用しており、天候や曜日、過去の実績などのデータを基に客数と販売数を優れた精度で予測する。牛乳や練り物など日持ちのしない日配品を対象に販売数を予測し、適正量を自動発注することで、発注業務の効率化・標準化を図れ、ロスや欠品を低減できる(図1)。
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ユーザーのリオン・ドールは、同システムの導入に先立ち、複数店舗で予測モデルを用いた3カ月間のシミュレーションを実施した。人手による発注実績と比較した結果、対象製品の欠品日数の6.5%の改善、ロス金額の25~40%の低減を確認した。
異種混合学習は、多種多様なデータから複数の規則性を自動で発見し、その規則に基づいて状況に応じた最適な予測を行う。店舗/商品ごとに規則性を自動で検出して予測することで、きめ細かく精度に優れた自動発注が可能になる。
また、同システムは予測結果の根拠まで説明可能な「ホワイトボックス型AI」であるため、複雑な分析についても解釈性の高い予測結果が得られる。予測の理由が示されることで、予測の納得感が増し、問題発生時には原因解明を容易にする。
システム提供の背景についてNECは、小売業界において人手不足に対応した働き方改革や食品ロスの削減といった課題に直面しており、ITを活用した業務変革が求められていることを挙げている。