国立研究開発法人理化学研究所(理研)と富士通は2021年4月2日、超伝導量子コンピュータの実用化に向けて「理研RQC-富士通連携センター」を開設したと発表した。理研が同年4月1日に設置した「量子コンピュータ研究センター」内に開設した。
理化学研究所(理研)は、量子コンピュータの開発拠点および拠点中核組織を担い、それに関わる基礎理論・基礎技術の研究ユニットを包括する組織として「量子コンピュータ研究センター」(埼玉県和光市) を2021年4月1日に設置した。
富士通は、組み合わせ最適化問題を高速に解く技術「デジタルアニーラ」を用いた製品やサービスを提供してきた。2020年3月からは、国内外の研究機関と連携し、量子コンピューティングの研究開発を進めている。
2020年10月には、富士通研究所が理研などと、超伝導量子コンピュータに関する共同研究を開始すると発表している(関連記事:富士通研究所、量子ゲート型の量子コンピュータに参入、理研、東大、阪大、デルフト工科大と共同研究)。
超伝導量子コンピュータの実用化に向けて連携を強化
今回、超伝導量子コンピュータに関する共同研究を発展させるため、理研の「量子コンピュータ研究センター」内に、富士通と理研の連携センター「理研RQC-富士通連携センター」を開設した。誤り耐性のある超伝導量子コンピュータの実現に向けて、組織のミッションを明確化するとともに、研究開発体制を強化する。
同センターでは、理研が取り組む超伝導回路を使った量子コンピュータの先端技術と、富士通が保有するコンピューティング技術、顧客視点に基づいた量子技術の応用知見を統合する。研究開発の成果は、創薬、材料などへの応用だけでなく、新しい物理現象や原理の解明に向けて広く社会に普及させる。
設置期間は、2021年4月1日から2025年3月31日までの4年間だが、2025年4月以降も継続する予定である。
ハードウェアとソフトウェアを開発し、試作機で検証する
共同で取り組む研究の1つは、超伝導量子コンピュータハードウェアの研究である。超伝導量子コンピュータを1000量子ビット級へと大規模化することを念頭に、量子ビットの製造におけるばらつきの改善や、周辺部品および配線部の小型化と低ノイズ化、パッケージやチップの低温実装などの基盤技術を開発する。
さらに、これらのハードウェアに関する要素技術の研究成果を統合し、超伝導量子コンピュータ試作機を開発し、要素技術の有用性を検証する。
共同で取り組むもう1つの研究は、超伝導量子コンピュータソフトウェアの研究である。量子コンピュータを動作させるために必要なミドルウェアおよびクラウドコンピューティングシステム、さらにアプリケーションを実行するためのアルゴリズムを開発する。
超伝導量子コンピュータの試作機において、量子化学計算アルゴリズムと量子エラー緩和技術を統合した量子アルゴリズムを実行することにより、実応用でのエラー緩和技術の有用性を検証する。並行して、量子エラー検出などの基礎的な実証実験も行い、量子エラー訂正機能を実現するための課題の抽出と技術の改善に取り組む。