[市場動向]

スパコン「富岳」で商用の解析アプリケーションを高速に実行、富士通が動作検証

動作検証アプリケーション8種を2021年6月から順次提供

2021年6月23日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)

富士通は2021年6月23日、スーパーコンピュータ「富岳」で商用アプリケーションを動作させ、処理を高速に実行できることを実証したと発表した。流体解析などのシミュレーションのための商用アプリケーションを用いて、大規模かつ高精細な解析が高速に行えることを確認している。実証は2020年11月から2021年5月にかけて行った。

 富士通は、商用アプリケーションをスーパーコンピュータ「富岳」で実行させ、高速に解析できることを実証した。

 富岳は、理化学研究所が「京(けい)」の後継として運用するスパコンである。富士通がプライマリベンダーとなって2014年に開発が始まり、2021年より本格稼働を開始している(写真1)。

写真1:理化学研究所が運用するスーパーコンピュータ「富岳」(出典:富士通)

 今回の実証では、富岳の技術を活用した商用スーパーコンピュータ「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC」向けの開発環境と動作検証環境をベンダー各社に提供し、アプリケーションベンダー各社と共同で動作検証を行った(関連記事富士通、京後継「富岳」ベースの商用スパコン「PRIMEHPC FX1000」「同FX700」を販売)。

 現在、製造業の製品開発や技術研究では、PCのクラスタリングシステムを使って流体解析や構造解析などのシミュレーションを実施している。しかし、大規模かつ高精細なシミュレーションが求められるケースでは、計算結果が出るまでに多くの時間を要しているという。

 これを受けて富士通は、大規模シミュレーションのための商用解析アプリケーションをスーパーコンピュータで動作させられるように、アプリケーションベンダー各社との取り組みを開始した。商用アプリケーションの性能チューニングを行うと共に、高並列・高効率計算のための並列処理技術を適用した。

 実証では、8種類の商用アプリケーションの動作検証を行った。ベンダー各社はこれらを動作検証済みのPRIMEHPC用アプリケーションとして、2021年6月から順次提供する予定である(表1)。

 表1のうち3種類のアプリケーションについては、富岳を用いた大規模解析において、高速かつ高精細なシミュレーション結果を得ることができた(詳細は次ページ)。

表1:「富岳」および「PRIMEHPC」シリーズでの動作検証を実施した商用アプリケーション(出典:富士通)
分野 製品名 提供企業 備考
流体解析 CONVERGE Convergent Science 「富岳」においても動作確認済み、シミュレーションを実行するソルバー部を提供
Cradle CFD | scFLOW ソフトウェアクレイドル 「富岳」においても動作確認済み
Fluent Ansys シミュレーションを実行するソルバー部を提供
HELYX ENGYS Ltd.  
Simcenter STAR-CCM+ Siemens Digital Industries Software, Inc.  
構造解析 ESI Virtual Performance Solution (VPS) ESI Group 「富岳」においても動作確認済み、陽解法機能を提供
LS-DYNA Ansys 「富岳」においても動作確認済み、陽解法と陰解法を含む全ての機能を提供
電磁界解析 JMAG JSOL 「富岳」においても動作確認済み

●Next:富岳で動作した3種類の商用アプリケーションに表れた効果の詳細

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