ITコンサルティング・調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)は2023年4月11日、国内の労務管理製品市場の規模推移および予測を発表した。それによると、労務管理市場は、市場認知度と業務のデジタル化の進展により2021年度は61.5%増と急拡大した。2022年度も高成長を維持すると、同社は見ている。
アイ・ティ・アール(ITR)によると、労務管理製品市場の2021年度の売上金額は84億円で、前年度比61.5%増と急速な伸びとなった。2022年度の売上金額も同35.7%増と、引き続き高い伸びを維持すると予測している(図1)。
同社は労務管理製品市場を、「従業員の労働に関する業務を法律や就業規則に基づいて管理するシステム。社会保険や福利厚生の加入管理など、従業員の働き方や働く環境の円滑な構築・運用を支援する目的に利用し、雇用契約や入社手続き、人事、給与、就業、研修・教育、福利厚生、年末調整といった各種人事系業務の申請・承認機能などで構成する」としている。
ITRは、主要ベンダーの積極的な広告・宣伝によって市場認知度が向上していることが主な要因と見ている。また、近年の労働および社会保険に関する行政手続きの電子申請の義務化に伴い、紙や押印のアナログによる労務管理業務のデジタル化が急速に進展していることも市場拡大の追い風となっているという。
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各ベンダーとも人事システムなど各種システムとの連携機能を拡充し、利便性の向上を図っている。そのため、新規ユーザーの増加に加えて、既存ユーザーのシステム拡張が進みつつある。こうしたことから、労務管理市場のCAGR(年平均成長率。2021~2026年度)は26.3%で、2026年度には270億円規模に達すると同社は予測している。
「企業における労務管理は、雇用と就業に関するアナログな業務のデジタル化を行うことにより、従業員の労働環境を円滑にサポートしつつ、生産性向上への貢献も期待される。また、社会保険や労務に関する法令は改正も多く、その判断には高い専門性が求められる。SaaS型の労務管理は、こうしたニーズを背景に、企業の従業員規模や業種を問わず成長を続けてきた。雇用の流動化が進むなか、労務管理市場は今後も成長が見込まれる」(ITR)
今回の発表は、ITRの市場調査レポート「ITR Market View:人事・給与・就業管理市場2023」に基づく。同レポートは、人事管理、給与管理、就業管理、労務管理の全4分野を対象に、国内44ベンダーへの調査による2020~2021年度売上実績および2026年度までの売上予測を掲載している。