矢野経済研究所は2023年5月11日、国内の人事・総務関連業務アウトソーシング市場の調査結果について、主要14分野サービスの動向、参入企業動向、将来展望を発表した。2021年度の人事・総務関連業務アウトソーシング市場は、前年度比6.7%増、2022年度は同6.0%増を予測している。「働き方改革」「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進」「人的資本経営」など政府提唱の大きな流れが近年のサービス需要を喚起しているという。
矢野経済研究所の調査によると、2021年度の人事・総務関連業務アウトソーシング市場規模(主要14分野計)は、前年度比6.7%増の11兆3438億円だった(図1)。内訳は「人材関連業務アウトソーシング市場」が全体の約8割を占めており、詳細は以下の通り。
図1:人事・総務関連業務アウトソーシング市場規模推移(主要14分野計)(出典:矢野経済研究所)拡大画像表示
- シェアードサービス市場(シェアードサービスセンター、学校法人業務アウトソーシング)は、前年度比4.0%増の5578億円
- 人事業務アウトソーシング市場(給与計算アウトソーシング、勤怠管理ASPサービス、企業向け研修サー ビス、採用アウトソーシング(RPO)、アセスメントツール)は、前年度比7.0%増の9776億円
- 総務業務アウトソーシング市場(従業員支援プログラム(EAP)、健診・健康支援サービス、福利厚生アウトソーシング、オフィス向け従業員サービス)は、前年度比5.4%増の2803億円
- 人材関連業務アウトソーシング市場(人材派遣、人材紹介、再就職支援)は、前年度比6.9%増の9兆5281億円
同社によると、近年のトピックとして、テクノロジーの急速な進展が当該市場に大きな影響を及ぼしているという。「業務のシステム化によって、人を介さないサービスの提供範囲が拡大している。人を介してサービス提供するアウトソーシングサービスとの線引きを含め、既存の業務フローやオペレーション体制を早急に見直す必要性が年々高まっている」。
サービスを提供するベンダー側では、1社あたりの受注単価向上を目指し、単純な業務処理だけでなく、高付加価値サービスの提供へ向けてサービスの深耕を強化する流れが加速しているという。「業務・組織改革を通じて経営を支援する業務コンサルティングを提供する事業者が増加傾向にある。特に、働き方改革やデジタルトランスフォーメーション(DX)、SDGsの推進に関わる業務支援コンサルティングを行う事業者が増えている」。
「企業経営力や人材獲得力の強化を目的に働き方改革やDX、人的資本経営に取り組む企業が増えたことで、景気減退による影響を上回る勢いでサービス需要が拡大している。コロナ禍に関しても、むしろアウトソーシング需要が高まる方向に作用している」(矢野経済研究所)。
就労人口の減少も、人事・総務関連業務アウトソーシング市場に大きな影響を与えているという。人事・総務関連業務を自社のリソースで行ってきた日系大手企業において、ベテランの人事担当者の定年退職などに合わせ、外注化機運が高まっている。
「すでにアウトソーシングサービスを導入している企業の継続利用や利用サービスの広がり、中小企業を中心とした未導入企業への需要拡大といった要因で同サービスの裾野が拡大している。なかでも中小企業は、安価に利用できるクラウドサービスにより需要が急速に顕在化している」(同社)
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