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[市場動向]

全銀システム障害の詳細を報告、64ビット化でテーブルサイズが増えて作業領域が不足

2023年12月1日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)

一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)とNTTデータは2023年12月1日、共同会見を行い、同年10月10日に全国銀行データ通信システム(全銀システム)で発生したシステム障害について経緯、原因、再発防止策を報告した。原因については詳細を明らかにした。システムが32ビット環境から64ビット環境に変わったことで金融機関名テーブルのサイズが増えたが、確保するメモリー領域のサイズを変更していなかった。

 全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)とNTTデータは、2023年10月10日に全国銀行データ通信システム(全銀システム)で発生したシステム障害について共同会見を行い、経緯、原因、再発防止策を報告した(写真1関連記事全銀ネットのシステム障害、発生から1日経過も復旧の目途立たず全銀ネットのシステム障害が復旧、他行宛の振込取引が通常利用可能に)。

 原因については、全銀ネットが障害発生から8日後の10月18日に「システム障害に係る対応状況について」を公表して、推定される原因と対応策を報告した(関連記事脱メインフレーム大作戦、最初の一歩でつまずいた全銀システム)。

 続いて、NTTデータが11月6日に会見を開き、金融機関名テーブルを生成するプログラムに不具合があったことと、旧環境(32ビットOS)から新環境(64ビットOS)への移行が影響したことを報告していた(関連記事全銀システム障害の原因はテーブル生成プログラムの不具合、新旧稼働環境の違いを吸収できず─NTTデータ)。

 今回、全銀ネットとNTTデータは原因の詳細を説明した。システムが32ビット環境から64ビット環境に変わったことで、C言語のデータ型のサイズの違いから、テーブル生成プログラムが生成する金融機関名テーブルのサイズが増えた。しかし、テーブル生成プログラムがテーブルの生成のために確保するメモリー領域のサイズについては変更していなかった(図1)。

図1:障害の発生原因。32ビット環境から64ビット環境に変わったことで生成するテーブルのサイズが増えた結果、確保したメモリー領域に収まりきらなくなった(出典:全国銀行資金決済ネットワーク、NTTデータ)
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 この結果、金融機関名テーブル自体は確保領域に収まるが、金融機関名テーブルと共に作成する3つのインデックステーブルの一部が確保済みのメモリー領域に収まりきらない状態になった。このため、確保していないメモリー領域に書きこんだインデックステーブルの一部が、他のアプリケーションによって上書きされた。

 インデックスの参照先として、本来アクセスしてはいけないメモリー領域を示すことになったことからアプリケーションが異常終了した。今回のケースでは、特定の一部のカナで始まる金融機関名のインデックスが壊れた。壊れたインデックスは全体の2%にあたる(図2)。

図2:障害が発生した、システム上のプロセス(出典:全国銀行資金決済ネットワーク、NTTデータ)
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 テーブル生成プログラムは、C言語で開発したプログラムである。これまで32ビット環境でコンパイルして動かしていたコードを変更することなく、そのまま64ビット環境で再コンパイルして使っている。全銀システムのOS環境では、金融機関名テーブルで使っているデータ型(long型)のサイズが32ビット環境と64ビット環境で異なることから、生成するテーブルのサイズが増えた。なお、インデックステーブルで使っているデータ型のサイズは32ビット環境と64ビット環境で同じであり、テーブルのサイズにも変化はない。

●Next:開発・テスト工程のそれぞれで抱えていた課題、今後の方針

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