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曖昧さが目立つFujitsu Uvanceとは?─富士通の「コンサルタント1万人計画」を検証する[後編]

2024年4月10日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」は2021年10月、富士通が掲げるパーパスの実現に向けて「社会課題の解決にフォーカスしたビジネスを推進する」と謳って発表したものだ。Uvanceは、「あらゆる(Universal)ものをサステナブルな方向に前進(Advance)させる」という2つの言葉を合わせた造語であり、これからの富士通の中核を担う事業を指す。発表から2年半、富士通は折に触れてUvanceの説明会を開催し、認知拡大に努めている。前編に続いて、富士通の「コンサルタント1万人計画」の意図と合理性を検証する。

●前編リスキリングでSEを稼げるコンサルに”の不思議─富士通の「コンサルタント1万人計画」を検証する

 前編で、“コンサルティングスキルを持つ人材”を1万人にする計画の答えは、富士通が注力する「Fujitsu Uvance」事業にあると説明した。読者はUvanceについてどの程度ご存じだろうか。筆者が知るCIOや情報システム責任者において認知度は低く、「よく知らない」という人が大半である。

図1:Fujitsu Uvanceの概要(出典:富士通)
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 そこでまずはUvanceを紐解いていこう。図1に「社会課題を起点として、クロスインダストリーでお客様の成長に貢献するデジタルサービス」とある。分かりにくいのはこの説明だ。

 まず、「社会課題」の意味が分からない。おそらく環境問題や食料問題、少子高齢化や健康・医療の問題などは含まれるだろう。しかし社会課題と明記した以上は経営課題や事業課題は対象外であり、となると物流の2024年問題や労働生産性の低さにかかわる問題はどうか。あるいはレガシーシステムを更新・刷新するいわゆる“2025年の崖”問題は範囲外か。説明にある他の言葉、「クロスインダストリー」も今どき当然なので何を指すのか分かりにくいし、「デジタルサービス」に至っては、富士通が提供するのだから、それは言わずもがなでしょうと突っ込みたくなる。

Uvanceのホリゾンタルエリアとバーティカルエリアとは

 一方、図1の要素を見ていくと、3つの「ホリゾンタルエリア」と4つの「バーティカルエリア」がある。余談だが、この○○エリアという言葉も定義は不明だ。対象がシステムやサービスにとどまらないといった意図からエリアとしたのかもしれないが、分かりにくさは残る。

 それはともかく、前者には「Digital Shifts」「Business Applications」「Hybrid IT」がある。これらもあまり分かりやすくないので、「デジタライゼーション」「アプリケーション導入」「インフラ刷新」と読み替えると、富士通にとって本業中の本業だろう。

 SAP ERP、Salesforce、ServiceNowという、いわゆる“3S”に関わるシステム/サービスの導入やアップグレードがここに含まれる。AWS、Azureの“2A”も同じだ。富士通が2022年度にUvanceで売り上げた2000億円の相当部分をこれらの案件が占めるとされるが、ITコンサルティング会社やSIベンダーの多くも手がけているため競争は厳しい。

 インフラ刷新も同様で、ホリゾンタルエリア頼みではUvance事業の大幅な拡大は難しい。何よりも、富士通がこれらに関わるサービスを展開するのは当たり前で、ことさらUvanceとネーミングする必要が分からない。

まだ存在しないソリューションに挑むバーティカルエリア

 そこで重要になるのが4つのバーティカルエリア、すなわち「Sustainable Manufacturing(持続可能な製造業)」「Consumer Experience(消費者体験)」「Healthy Living(健康生活=医療DX)」「Trusted Society(信頼できる社会)」である。2025年度に7000億円という売上高を達成するには、これらの拡大は必須だ。

 しかしエリアの名称がそうだからか、具体的な内容が判然としない。Sustainable Manufacturingは「エネルギーや天然資源を節約しながら環境への悪影響を最小限に抑える、経済的に健全なプロセスを通じて製品を製造すること」なので比較的理解しやすいが、Consumer ExperienceはCustomer Experienceとの違いが分かりにくい。仮に4つを製造、流通・小売、ヘルスケア、行政・社会インフラ(交通、運輸、エネルギーなど)向けと読み替えると業種別になるので、前述のクロスインダストリーとの関係が見えてこない。

 手がかりになるのは、UvanceのWebサイトだ。ここで取り上げられている事例やソリューションから推測すると、①デジタライゼーション/DX、サステナビリティ/SXといった概念に適合する、②特定の企業ではなく、複数の企業に適用できる、③顧客固有ニーズではなく、SDGsに代表される大きな課題にアプローチする、④デジタル技術を適用して実現可能になる、のいずれかの条件に当てはまるものと考えられる(画面1)。

画面1:Fujitsu UvanceのWebサイトより
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 具体例を挙げると、調達・生産から販売・廃棄までを一貫したサーキュラーエコノミー(循環経済)、CO2排出削減など環境を意識した製造プロセス、診療や健康のデータを連携したヘルスケア、AIによる医療診断や創薬、交通機関を連携させるMaaS(Mobility as a Service)、官民のデータ連携による行政サービスの向上などである。こうしたソリューションやサービスに関しては、必ずしもニーズが顕在化しているわけではないし、実装すべき仕様や機能も明確ではない。それがUvanceのバーティカルエリアと考えられるのだ。

 では、仕様や機能が明確でないソリューションを手がけるにはどうすればよいか。富士通がリスクを負って開発したものを顧客に提案するか、アイデアを出して顧客と共同開発することが考えられる。“オファリング”と称するソリューション提供形態である。異業種を含む他社に提供したり共同開発に引き込んだりして、横展開するアプローチも欠かせない。新しいソリューションやサービスだけに機能拡張や追加開発が必須であり、1社のだけだと顧客の負担が大きくなるし、富士通が得られる収益も限られるからだ。

 結局、このようなビジネスを展開するには、相手(顧客企業)を説得したりリードしたりして導入を促すことが必要であり、発注者(ユーザー)と提供者(ベンダー)という関係ではなく、対等の立場=イコールフィッティングであることが望ましい。そこでコンサルティングのスキルを備えた人材、そしてコンサルティング会社というポジションが必要になる──。

●Next:ジョブ型人事制度とSEのコンサルタント転換策の整合性はどうか

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