矢野経済研究所は2024年4月22日、国内における人事・総務関連業務を対象としたアウトソーシング市場(主要14分野)を調査した結果を発表した。2022年度は事業者売上高ベースで前年度比7.0%増の11兆1109億円だった。このうち人材関連業務アウトソーシング市場は前年度比7.8%増の9兆2355億円で全体の8割超を占める。2023年度は同6.7%増を予測しており、市場は今後も拡大するとしている。
矢野経済研究所は、国内における人事・総務関連業務を対象としたアウトソーシング市場(以下の主要14分野)の調査結果の概要を発表した。
- シェアードサービスセンター
- 学校法人業務アウトソーシング
- 給与計算アウトソーシング
- 勤怠管理ASPサービス
- 企業向け研修サービス
- 採用アウトソーシング(RPO)
- アセスメントツール
- 従業員支援プログラム(EAP)
- 健診・健康支援サービス
- 福利厚生アウトソーシング
- オフィス向け従業員サービス(オフィスでのコーヒー・菓子販売など)
- 人材派遣
- 人材紹介
- 再就職支援
2024年1月~3月の調査期間で、調査対象は人事・総務関連業務アウトソーシングサービスを提供する主な事業者など。専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話やメールによるヒアリングおよびアンケートによって調査している。
調査の結果、2022年度の人事・総務関連業務アウトソーシング市場は、事業者売上高ベースで前年度比7.0%増の11兆1109億円だった。このうち人材関連業務アウトソーシング市場が全体の8割超を占めている(図1)。
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サービス分野別では次のような結果となっている。
- シェアードサービス市場(シェアードサービスセンター、学校法人業務アウトソーシング):前年度比1.6%増の5670億円
- 人事業務アウトソーシング市場(給与計算アウトソーシング、勤怠管理ASPサービス、企業向け研修サービス、採用アウトソーシング、アセスメントツール):前年度比4.0%増の1兆165億円
- 総務業務アウトソーシング市場(従業員支援プログラム、健診・健康支援サービス、福利厚生アウトソーシング、オフィス向け従業員サービス):前年度比4.1%増の2919億円
- 人材関連業務アウトソーシング市場(人材派遣、人材紹介、再就職支援):前年度比7.8%増の9兆2355億円
「2020年度以降はコロナ禍の影響を受けて業績を悪化させる企業・業界が散見された。しかし、経済活動が本格的に再開した2022年度後半からは、ウィズコロナ時代の新たなビジネス環境に対応した新サービスが投入されるなどの動きが活発になり、コロナ禍以前のサービス需要を徐々に取り戻している」(矢野経済研究所)
加えて、就労人口減少による恒常的な人材不足が顕在化し、貴重な社内人材を間接業務ではなくコア業務(主要業務)に専念させる流れが加速しているという。矢野経済研究所は、定年退職者数の増加と共に間接業務を担う人材を外部から採用する流れとも相まって、アウトソーシング需要は引き続き拡大基調であると見ている。
また、コロナ禍以降、テレワークが広く普及したことで、間接業務を行うために出社するよりも外注化したほうが効率的で生産性が高いとの考えが浸透し、アウトソーシングサービスの活用に踏み切る企業が増加しているという。
「特に大企業では、政府が推進する人的資本経営に取り組む中で、限りある経営資源をコア業務(主要業務)へと効果的に集中投下する動きがある。その一方で、間接業務の経費をより一層圧縮すべくアウトソーシングサービスの活用に踏み切る企業が増えている。また、近年は単なるコスト圧縮手段としてアウトソーシングサービスを活用するのではなく、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を目的に活用する流れも生じている」(同社)
矢野経済研究所によると、就労人口の減少が市場に大きな影響を与える中、業務の内製化を主体としてきた日系大企業において、ベテラン人事担当者の定年退職などに合わせて外注化の機運が高まっているという。
「加えて、すでにアウトソーシングサービスを導入している企業のリピートや、中堅・中小企業を中心としたアウトソーシングサービス未導入企業にまで、需要の裾野が拡大している。なかでも中堅・中小企業のサービス需要は、リーズナブルに利用できるクラウドサービスの登場に合わせて急速に顕在化している」(同社)