[市場動向]
人の心をサイバー空間に再現する「ヒューマン・デジタルツイン」の共同研究─MRIとNES
2025年12月15日(月)IT Leaders編集部、日川 佳三
三菱総合研究所(MRI)とNECソリューションイノベータ(NES)は2025年12月15日、「ヒューマン・デジタルツイン(HDT)」の共同研究を開始したと発表した。人の心をサイバー空間に再現してシミュレーションやサービス設計に活用する。リアル空間で人に働きかけた結果とHDTでの結果を比べることで、HDTがリアル空間での人の行動をどこまで再現できるかを検証する。
三菱総合研究所(MRI)とNECソリューションイノベータ(NES)は、「ヒューマン・デジタルツイン(HDT)」の共同研究を開始した。人の心をサイバー空間に再現してシミュレーションやサービス設計に活用する。リアル空間で人に働きかけた結果とHDTでの結果を比べることで、HDTがリアル空間での人の行動をどこまで再現できるかを検証する(図1)。
図1:人の心をサイバー空間に再現する「ヒューマン・デジタルツイン」の概念(出典:三菱総合研究所、NECソリューションイノベータ)拡大画像表示
デジタルツインは、リアル空間に存在する対象物から情報を取得し、サイバー空間上の対象物のモデルに反映する技術。「これまでは、工場や都市といった物理的なモノをサイバー空間で再現する『モノのデジタルツイン』が中心だった。現在、センサーやAIなどの発展と共に、人の心をデジタルで再現するHDTに注目が集まり始めている」(両社)。
両社によると、HDTの活用は、人の姿勢や動作といった外観的な情報を反映したHDTによる物理的な身体負荷のシミュレーションが先行している。昨今では、心理状態や価値観、パーソナリティ、感情などの内面的な情報を反映したHDTのニーズが高まっているという。
HDTの利用シーンの例として、アンケートやインタビューの結果を事業のマーケティング施策として分析する場合、個人や集団の傾向や意思決定に至る内面的な情報の反映も必要になることを指摘する。「HDTによって、これらを精緻に反映したシミュレーションができれば、リアル空間で人への調査を行うことなく、シミュレーションの結果をマーケティングや政策立案などに役立てることができる」(両社)。
図2は主な研究内容と両社の役割である。共同研究では、日本人の心理・行動特徴など大規模な心理的特性データを学習させたHDTを構築し、サイバー空間で「人の心」を再現できるかを検証する。HDTにおいて、健康維持のためのセルフケアを促す介入といった、リアル空間の人に行動変容を促す介入実験を行い、それをHDTで再現する。そのうえで、リアル空間とHDTの実験結果を比較・分析して、HDTにおけるリアル空間の人の行動変容の再現度を検証する。
図2:ヒューマン・デジタルツインの実証実験の内容と役割(出典:三菱総合研究所、NECソリューションイノベータ)拡大画像表示



































