[技術解説]

インテル、最新CPUのXeon 5500シリーズを出荷へ、メーカー各社が搭載製品を一斉に発表

2009年5月7日(木)IT Leaders編集部

「1995年のPentiumPro以来、最も重要で革新的な製品」─。インテルは2009年4月6日、サーバー向けのマイクロプロセサ「Xeon 5500シリーズ」を発表した。性能の向上はもちろん、仮想化機能の強化や省電力化などの特徴を備える。サーバー・メーカー各社は、一斉に搭載製品を発表。ユーザーに対し、サーバーの更新を促そうとしている。

インテルXeon5500(右)とチップセット。CPUやメモリーバスを接続するノースブリッジ「i5520」(上)と、I/Oを接続するサウスブリッジ「ICH9/10」(左
写真1:インテルXeon5500(右)とチップセット。CPUやメモリーバスを接続するノースブリッジ「i5520」(上)と、I/Oを接続するサウスブリッジ「ICH9/10」(左)

 Xeon 5500は、プロセサの内部構造を従来の「Coreマイクロアーキテクチャ」から、「Nehalem(ネハレム)マイクロアーキテクチャ」に一新。従来は外付けだったメモリーコントローラを内蔵する一方、プロセサ間やプロセサとチップセット間を結ぶ機構に「QuickPath Interconnect」を採用し、データ転送速度を従来の3倍以上に高めた(図2)。「性能は最大2.25倍に向上した」(インテルの吉田和正社長)という。

図2 Xeon5500の構成図
図2 Xeon5500の構成図。デュアルプロセサ構成が基本。プロセサ間や、プロセサとチップセット間を結ぶ機構に「QuickPath Interconnect」を採用

 利用サイドから見た特徴は3つある。第1は上述の性能向上。加えて、1つのプロセサコアをあたかも2つあるかのように見せる「ハイパースレッディング技術」、プロセサの動作周波数を一時的に高めて性能を上げる「ターボ・ブースト技術」なども実装する。

 2番目は、仮想化をハードウェア面から支援する機能の強化。具体的には、従来のXeonプロセサが混在する形での仮想環境を構築できる、仮想化のボトルネックになりがちな入出力処理(I/Oとネットワーク)をハードウェアでアシストする、の2点だ。これらを利用するには、VMwareやHyper-Vなど仮想化ソフトの対応が必要になるが早晩、実現されるだろう。

 第3は省電力化だ。負荷状況に合わせてきめ細かく電力消費を制御したり、アイドル状態(負荷ゼロ)のコアへの給電を停止することにより、従来に比べ最大50%の電力消費を削減する。

 こうした点から、インテルは「2005年頃のシングルコアサーバー機を複数利用している場合、8ヵ月で投資を回収できる」といった試算を提示。Xeon5500搭載サーバーが、TCO削減に最適であることを強調した。これに呼応する形で、サーバー・メーカー各社は一斉に、搭載モデルを発表している。以下、主要製品を紹介しよう。

注目株はシスコの「UCS」

 Xeon5500搭載機の中で最も注目すべき製品の1つが、シスコシステムズの「Unified Computing System(UCS)」である。ルーターやスイッチなどの通信機器メーカーとしてIBMやHPと良好な関係を築いてきたシスコが、その関係が崩壊するリスクを冒して製品化したという事実からも、力の入れようが分かるだろう。

 実際、シスコ関係者によると、「インテルや仮想化ソフト・ベンダー、ストレージベンダーなどと協調しながら開発しており、サーバー、ストレージ、ネットワークを仮想化技術によって1つのシステムとして提供できる。既存のブレードサーバーとはアーキテクチャが異なる、新世代のブレード機」(同社関係者)という。例えば、最大320台の物理サーバー上で数千台の仮想マシンが起動している場合でも、1つのシステムとして管理できるのが特徴だ。

 図3にUCSの概要を示した。「Cisco UCS Bシリーズ ブレード」は、フルサイズ版とハーフサイズ版を用意。フルサイズ版「Extended Memory Blade Server」は、拡張メモリー技術により搭載するメモリーを384GBまで拡張できる。特徴的なのは、「Cisco UCS6100シリーズ ファブリックインターコネクト」「Cisco UCS2100シリーズ ファブリックエクステンダ」である。LANやSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)、HPC(ハイパフォーマンス・コンピュータ)ネットワークの混在するネットワーク環境を統合できる。出荷時期は2009年第2四半期の予定。価格は発表段階では公表されていないが、「競争力のある価格にする」(同社)という。

図3 シスコシステムズ「Unified Computing System」の構成。ブレード2機種を用意するほか、各種ネットワークを束ねるファブリックインターコネクトを搭載する
図3 シスコシステムズ「Unified Computing System」の構成。ブレード2機種を用意するほか、各種ネットワークを束ねるファブリックインターコネクトを搭載する

日本IBM、デル、日本HP

 次に主要メーカーの製品を見ていこう。まずシスコと同じ外資系から。

 日本IBMが発表したのは、ラックマウント型サーバー3製品とブレードサーバー1製品。ラックマウント型は、1Uサイズの「IBM System x3550 M2」と2Uサイズの「IBM System x3650 M2」、高集積型となる「IBM System x iDataPlex dx360 M2」の3製品。ブレードサーバーは「IBM BladeCenter HS22 」である。

 特徴は、4製品とも統合管理用のチップ「統合管理モジュール」を内蔵すること。チップには独自の自己診断機能を備えるファームウェア「uEFI」がインストールされており、サーバーの起動時間を短縮するほか、BIOSに代わってハードウェアを管理できる。

 従来はオプションだった遠隔管理機能も標準で装備。上記の4製品が混在する環境でも、電源のオン/オフや再起動などを操作できる。

 「IBM BladeCenter HS22」は、従来機(IBM BladeCenter HS21)に比べて3倍のメモリー搭載容量(96GB)と、約2倍のハードディスク搭載容量(1.3TB)に増強した。SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)を利用したり、USBメモリーにインストールした仮想化ソフトを直接起動したりできる。

 デルは「PowerEdge」シリーズとして、ブレードサーバー2種、ラックマウント型サーバー2種、タワー型サーバー1種の5製品を同時に発表した。

 今回のシリーズから、マザーボード上にユーティリティなどをインストール済の「ライフサイクル・コントローラ」を装備する。ファームウェアやデバイスドライバなどをあらかじめ用意。ファームウェアの更新やインストールするOSの選択、RAID構成などを決めるまでの作業を、メディアレスで行える。従来に比べて設定に要する時間を、約50%短縮できるという。

 管理ソフトとして「Dell Management Console」を無料で提供する。デル以外の製品も含めて運用管理できる点が特徴だ。プラグインを利用することで、IT資産管理やセキュリティ管理機能も統合できる。

 日本HPは、「HP ProLiant」シリーズとして、一挙に11製品を発表した。各製品とも、省電力化により電力コストを削減するほか、メモリースロットを12もしくは18個装備して、拡張性に配慮した設計となっている。

 エントリーモデル「HP ProLiant ML/DL100」シリーズでは、運用管理機能を向上。「HP ProLiant Onboard Administrator」と呼ぶ管理機能を内蔵する。サーバーの電力や内部の温度を監視し、負荷の低いときは消費電力を抑えられるようにした。サーバーのセットアップを容易にする「簡単セットアップCD」や、遠隔操作用のチップを内蔵するなど、システム管理者の業務負担を軽減できるようにした。

●Next:日本メーカーのサーバー新製品

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