[市場動向]
マイクロソフト、“Vista飛ばし”の顧客にWindows 7を訴求、ハイブリッド型クラウド戦略にも本腰
2009年8月3日(月)IT Leaders編集部
マイクロソフトは2009年7月7日、同月から始まる新事業年度(2010年度)の経営方針説明会を開催した。Windows 7の国内発売日を明らかにして話題を集める一方、自社導入型システムとクラウドサービスを密接に連携させる戦略を推し進めて、企業向けビジネスにさらに力を注ぐ姿勢を強く訴えた。
「厳しい1年だった」─。説明会の壇上に立った樋口泰行社長はまず2009年度をこう振り返った。言うまでもなく、景気後退で企業のIT投資が冷え込んだ状況を指してのことだ。新年度においても、ユーザー企業の投資マインドが急激に上向くことは考えにくいが、樋口社長は同社が今後リリースする重要な製品やサービスを中心に好材料をアピールした。
Windows 7は2009年10月に発売
まずクライアントPC向けOSの最新版となる「Windows 7」について、国内での発売は米国と同じ10月22日であると明言した。
互換性や高スペックのPCが必要、との理由でVistaに移行せずXPで我慢してきた企業は多い。この点で「市場の声に耳を傾けて数多くの改善を加えた」(樋口社長)というWindows 7が顧客の望み通りのものであれば、企業にも相当数が導入されることになる。
もっとも、翌日の8日(日本時間)にはグーグルがOS市場に参入することを公式ブログで表明。Linuxベースのネットブック向けOSという位置付けであるものの、インターネット連携の出来次第ではマイクロソフトにも顧客にもかなり気になる存在となるだろう。
そのほか、「Windows Server 2008 R2」(年内メド)、Exchange Server 2010やSharePoint Sever 2010などを含む「Office 2010」シリーズ(2010年前半)などのリリースが控えている。
空も大地もハイブリッドで
一方で、クラウド戦略がより鮮明に見えてくる事業年度になる。08年10月、「Windows Azure」を軸とするクラウド戦略を打ち出したが、今秋以降にまず米国で商用サービスを開始。さほど間を置かずして日本でも公になる見通しだ。
オンプレミス(自社導入)のソフトと、クラウド上のサービスを連携させるハイブリッド型を推し進めるのが特徴である(図1)。樋口社長の言を借りれば「空と大地をシームレスに」という戦略だ。
それを支える要素技術は多岐にわたるが、重点を置くものとして、WindowsAzureのほか、操作性に優れたインタフェースを作る「Silverlight 3」(7月に提供済み)、既存のIT資産や開発スキルをクラウドにも生かせる「.NET 4.0」および「Visual Studio 2010」(いずれも2010年前半)を挙げた。
同社の最新の製品やサービスを検証する施設として、「大手町テクノロジーセンター」(東京都千代田区)を10月に開設する計画も発表。サーバーとクライアントそれぞれ約300台、ストレージ500TB以上を備え、企業のシステム導入を手厚く支援する拠点と位置付ける。
ERPパッケージ「Dynamics AX」やオンラインサービスの「BPOS」、DBMSの「SQL Server」などへの力の入れ具合も気になるところだが、この席上で言及は一切なかった。