「会計や販売、生産管理といった中核業務の処理にはそぐわない」「中堅・中小向けにはよいだろうが、大企業では使えない」。こうしたSaaSに関する“定説”を覆す事例が登場しようとしている。協和発酵キリンが、社内システムの全面SaaS化を宣言したのである。
協和発酵キリンは2010年4月から、給与計算や発令、評価といった人事システムに外部のSaaSを活用していく計画を明らかにした。現時点では、具体的なサービスベンダー名や費用は公表していない。購買システムを外部のSaaSに置き換える計画も進行中だ。
同社情報システム部の中山嘉之部長は「今後、社内の業務システムをできる限りSaaSに“外出し”していく。原価計算や会計、生産管理といった基幹業務システムも例外ではない」と言い切る。人事や購買システムに続いてどのシステムにSaaSを適用するかの優先順位は、システムの独自性や戦略性、他システムとのインタフェース数を考慮しながら決めていくという。
“疎結合”のシステムでSaaSの追加を容易に
ずいぶん思い切った施策である。というのも、多くの企業は大きく2つの不安材料から自社システムへのSaaS適用に二の足を踏んでいる。1つは、SaaSと既存システム、あるいはSaaS同士の連携だ。もう1つは、データの整合性をどう担保するかである。
協和発酵キリンは、そうした課題を解消したからこそ、今に至っている。カギとなる技術は、マスターHUBとトランザクションHUBから成る「エンタープライズHUB」だ(図1-1)。
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