[技術解説]

ビジネス分析の知識体系「BABOK」─要求を顕在化し 業務プロセスの不整合を回避する

あらためて見つめ直すBPMの価値 Part5

2010年8月24日(火)IT Leaders編集部

各部署からのさまざまな要求を集約し、一貫性のある業務プロセスを作成するのは大変な作業だ。こんなとき1つの目安となるのが、複数の要求を整理するための知識やスキルを体系化した「BABOK(ビーエーボック)」である。

業務プロセスを改善するにあたり、プロセスやシステムに求める要件は、業務プロセスに関わるステークホルダーごとに異なる。業務プロセスを最適化するためには、経営層や各部門からのニーズを明確化し、適切な要求のみに絞り込んで一貫性ある改善策を導き出すことが欠かせない。

だが実際は、要求をまとめる方法は統一しておらず、これらを総括する人材に求められる知識やスキルも明白でない。

目的を見失わないBPM実施を支援

こうした課題解決の参考となるのが、「BABOK(Business Analysis Body Of Knowledge)」と「ビジネスアナリスト(BA)」である。

BABOKはBPMやシステム開発などのプロジェクトに必要な知識やスキルを示したガイドラインだ。プロジェクトに関わる要求を顕在化し、必要となる要求を整理するのに役立つ。BPMにおいては、業務プロセスをモデル図に落とし込む以前の作業として、どのビジネスニーズを優先してプロセスに反映すべきかをまとめるのに有用だ。BAは必要な要求を洗い出して分析し、ステークホルダーごとに異なる要求の利害関係を調整する人材を指す。

BABOKやBAを用いることによる優位性について、BABOKのガイドライン策定やBAの啓発活動を行う非営利団体「IIBA」の日本支部 教育担当理事 斎藤宏海氏は、「BABOKは要求を可視化し、不適切なものをプロジェクト開始前に取り除ける。目標達成に適したプロジェクトだけ実施できるようにし、プロジェクトの価値を最大限引き上げられる」と話す。

要求整理に必要な知識エリア

では要求をまとめるにあたり、BAは何から取り組めばよいのか。その指針となるのが、BABOKが示す知識エリアだ(図5-1)。7つのカテゴリそれぞれに、実行すべきタスクを定義している。

図5-1 BABOKで定義する知識エリア
図5-1 BABOKで定義する知識エリア(画像をクリックで拡大)
  • エンタープライズアナリシス
    プロジェクトの投資対効果を考えながら、企業としてのゴールや目標を決める。ビジネス上の置かれた状況を分析したり、ビジネスニーズを文書化したりする。

  • 要求アナリシス
    候補に上がったソリューションがステークホルダーのニーズを満たすためにどんな機能が必要なのかを定義する。価値や実装の難易度などに応じて優先順位を付け、重要な要求を確実に取り込めるようにする。

  • ソリューションのアセスメントと妥当性確認
    ソリューションが目標に対して正しいものであるかを評価する。弱点を見極めるほか、そもそもシステム化せずにプロセスの順番を変えるだけでよいのかなども勘案する。

  • 引き出し
    ステークホルダーのニーズと懸案事項を把握し、どのような状況に置かれているのかを定義する。本当に必要な要求を顕在化し、うわべだけの不要なニーズと振り分ける。

  • 要求のマネジメントとコミュニケーション
    プロジェクトが進むことで起こり得る要求変更を管理する。変更した理由、影響範囲などを明記する。

  • ビジネスアナリシスの計画とモニタリング
    ステークホルダーの役割と責任、コミュニケーション方法を定義するほか、要求を満たすためのアプローチについて誰に意見を求め、報告すべきかを決める。

  • 基礎コンピテンシ
    要求の整理について記述したものではなく、適応力のあるBAになるための資質や知識などをまとめる。例えば問題を解決する発想力や、決断を下す際の判断基準を持つことが必要、などを記す。

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