「アライアンスクラウドはユーザー企業が共同でITの標準化を実施し、基幹系システムに使えるクラウド基盤作りを目指してきた。この枠組みに準拠して富士通がこのほど提供を開始した新サービスは、自社のITリソースを使い切った際に、不足分を補完するような用途に使える。IaaSやPaaSとしても使用可能だ」(大和総研の鈴木孝一専務)。
ITベンダーによる垂直統合=ロックインに陥る可能性が大きいとされるプライベートクラウド。この問題の解消を目指すのが、大和総研、新日鉄ソリューションズ、パナソニック電工インフォメーションシステムズというユーザー系のIT企業3社が2010年10月に発足させた、アライアンスクラウド推進ソサエティだ。基幹系システムでも使えるプライベート(ハイブリッド)クラウド環境の構築を目指し、特定のベンダーに依存しないオープンな技術標準の策定や製品技術の選定を進めてきた(関連記事)。
その成果を2011年12月21日に富士通が発表した。同ソサエティの標準モデルに準拠したハイブリッドクラウド基盤を構築。大和総研向けに2011年11月から運用を開始したという。具体的には、富士通館林システムセンター内にPCサーバー「PRIMERGY(プライマジー)」やストレージシステム「ETERNUS(エターナス)」などからなるアライアンスクラウド準拠の基盤を構築。これを大和総研が保有するデータセンターで稼働するプライベートクラウド基盤と接続し、システム資源を共有したり融通する仕組みである。
大和総研はすでに中国におけるオフショア開発向けや社員向けに800台の仮想デスクトップ環境を自社で運用中。今回のサービスを利用して1600台の仮想デスクトップ環境を追加するほか、BCP(事業継続)のためのバックアップ基盤としても利用する。富士通が提供するクラウド基盤は従量課金を採るため、大和総研は利用コストの最適化、TCO削減がはかれる利点がある。
アライアンスクラウド推進ソサエティには上記の3社のほか、アドビシステムズ、EMCジャパン、イージェネラ、ヴイエムウェア、NEC、シスコシステムズ、シトリックス・システムズ・ジャパン、日本オラクル、日本ヒューレット・パッカード、日本マイクロソフト、ネットアップ、富士通、レッドハットのベンダー13社が参加している。富士通が提供するサービス基盤の詳細構成は公表されていないが、イージェネラのPAN Managerやシトリックス・システムズのデスクトップ仮想化製品を採用したようだ。