[海外動向]
EC市場の健全な成長に向けて日越両国の官僚や識者が意見交換
2012年1月11日(水)川上 潤司(IT Leaders編集部)
経済成長が著しく、有数の親日国家でもあるベトナム。グローバル展開を考えるなら見逃せない市場の1つだ。そこで開催されたECワークショップの模様など、日越交流の一端を報告する。
成田から空路約6時間。ホーチミン市郊外のタンソンニャット国際空港に降り立ったのは2011年11月24日のこと。乾季に入ったこの地は爽やかな青空が広がり、街角の温度計は31度を指し示していた。
ダウンタウンまで車で30分ほどの道すがら、ものすごい数のオートバイがクラクションをけたたましく鳴らしながら走る光景が否応なく視界に飛び込んでくる。目をこらせば車体には「HONDA」「YAMAHA」「SUZUKI」…。多くが日本製の小型スクーターだ。交通法規がどうなっているのかは知らないが、スーパーカブに家族4人が曲乗りさながらにまたがる姿も珍しくはない。何と言おうか、街全体が一種独特のエネルギーに包まれている。
日本の動向やノウハウに注目
皆が一様に明るい表情をしていることが活気を醸し出す1つの理由かもしれない。経済成長のなせる技か─。人口約8700万人のベトナム社会主義共和国のGDPの成長率はここ数年、5〜6%台を維持し右肩上がりだ。BRICs諸国にも引けをとらず、一方では貧困層の割合は中国やインドを下回っているという。国民全体の生活水準が高まり、ライフスタイルも着実に変化してるようだ。携帯電話を手にメールをやり取りする若者が溢れ、市街地には想像以上にWi-Fiスポットが点在している。かつて高度成長期に向かう日本がそうだったように、日々豊かになっていくという実感に裏打ちされた躍動感が、この国に渦巻いている。
前段が長くなったが、ホーチミン市を訪れたのは「ベトナム-日本ECワークショップ」を見学するためだ。日本の経済産業省と、ベトナムの電子商取引IT庁(VETICA)ならびに商工省(MOIT)が共同で開催。ベトナムのECの健全な発展や日本企業の進出促進をテーマに、オープンな場で情報交換する1日限定のイベントである。
会場となったのは中心街の一角にあるREXホテル。用意された150前後の席は、最前列からあっという間に埋まった。政府の役人、金融機関、EC事業者、マスコミ…。様々な立場の来場者によって広い催事場が熱気を帯びた。
最初に登壇したのが経産省・商務情報政策局・情報国際企画室長の江藤俊浩氏だ。日本のネット経済の動向について、昨今のスマートデバイスやソーシャルメディアの普及などの状況を交えながら報告。配られたプレゼン資料に熱心にメモを書き込む来場者の姿が目立ち、その関心の高さが伺われた。
続いて壇上に立ったのがベトナム電子商取引IT庁のグエン・ティ・ハン氏。国内でWebサイトを持つ企業はまだ28%で、検討中の11%を加えても4割程度という現状を紹介しつつも、今後はB2B、B2Cの双方で大きくEC市場が拡大すると強調。健全な成長のためには、セキュリティや電子決済、コンプライアンスなどの面で、日本をはじめ先行する各国に学ばなければならないと来場者に訴えかけた。
この地における空港や橋梁といった“ハード”のみならず、法律整備など“ソフト”の面でも日本はこれまで大きく協力してきた経緯がある。ECの最新事情なら欧米に目を向けるべきと考えることもできるが、親日国家は今、日本に多くの学びを求めているようだ。
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