[イベントレポート]
すべての営業活動を顧客起点に─SFDC、モバイル対応した「Salesforce1」を発表
2013年12月25日(水)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)
米Salesforce.comは2013年11月19日(現地時間)から21日に、米サンフランシスコで同社の年次イベント「Dreamforce2013」を開催した。CEO(最高経営責任者)のマーク・ベニオフ氏は基調講演で、「Internet of Customer(IoC)の時代が訪れた」と強調。モバイルに全面対応した新プラットフォーム「Salesforce1」の利用を訴えた。
マーク・ベニオフCEOが強調する「Internet of Customer(IoC)」とは何か。同氏の講演によれば、「ネットを介して、顧客と常につながり、誰が製品やサービスをどう使っているのかを把握し続けること」である。
ベニオフCEOは、「これまでの企業はB2C(Business to Consumer:企業対個人)といいながら、顧客と1対1の関係を築けず、『どこの誰が、どう使っているか』を把握してこなかった。Consumerを1つの塊としか認識していなかったからだ。これからは『B2C(企業対顧客)』でなければならない」と語る(写真1)。そこでは、従来の営業活動だけでなく、マーケティング活動やフィールドサービスなど、企業と顧客の接点に位置するアプリケーションの開発・運用が重要だとする。
IoCの背景には、スマートフォンに代表されるモバイル環境の浸透に加え、M2M(Machine to Machine)やセンサーネットワークといった「Internet of Things(モノのインターネット)」が現実味を帯びてきたことがある。クラウドやビッグデータにからむ製品/サービスベンダーの多くが、IoTを引き合いに、ビジネスモデルのサービスシフトを主張し始めている。同様のコンセプトを、「SFA(Sales Force Automation:営業活動支援)」や「CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)」を事業の根幹に置くSalesforce.comが、顧客を軸に整理したものだともいえる。
ただベニオフCEOは、「IoTについては各社も語っている。ウェアラブルコンピュータといった新しいデバイスも今後は接続対象だ。だが、それらデバイスの先に顧客がいることを忘れてはならない」と訴える(図1)。この指摘は、テクノロジドリブンになりがちなIoTをビジネスドリブンに変えるための重要な視点だろう。
全機能をモバイルから利用可能に
IoCを実現するためのプラットフォームだとして、Salesforce.comが投入するのが「Salesforce1」である。同社の既存アプリケーションやISV(独立系ソフトベンダー)製品を含めて、すべてのアプリケーションをモバイル環境から利用可能にする。モバイル対応アプリケーションの開発に向けて、API(Application Programming Interface)をこれまでの10倍以上に増やしたとする。
Salesforce1は、4つのクラウドサービスからなる。従来からのSFA/CRM分野の「Sales Cloud」、メンテナンスやアフターサービスなどに向けた「Service Cloud」、マーケティング活動を統括するための「ExactTarget Marketing Cloud」、そして、これらのサービスを束ねながらモバイル環境からの利用を可能にする「Platform Cloud」である(図2)。
Platform Cloudは、複数のクラウドサービスをアグリゲーションするほか、MDM(Mobile Device Management)やSSO(Single Sign On)といった機能を提供する。これらは同社が「Enterprise Container」と呼ぶソフトを介して、各デバイスに届けられる。IT部門などは、Platform Cloudを介して、すべてのアプリケーションやモバイル端末を管理できることになる。
各サービスは、既存のアプリケーション開発環境である「Force.com」を基本に、よりオープンなPaaS(Platform as a Service)である「Heroku1」、およびデジタルマーケティング用の「Exact Taget Fuel」上で動作する。それぞれの環境が管理する顧客データなどを内部で同期を取ることで、全社統合した顧客データベースを仮想的に構築できるとしている。
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