[海外動向]

2014年5月7日(水)田口 潤（IT Leaders編集部）

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　同氏はさらに、「（ゼロからすべてのシステムを作る）ビッグバン・アプローチは機能しません。ビルディングブロック・アプローチが必要です」と語る。その上でImpact2014に合わせて発表した「IBM Cloud Marketplace」や、「BlueMix」を実現手段として紹介した。

図2：IBM Cloud Marketplaceを新たに発表。クラウド上のソフトウェア／サービスの市場である
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　簡単に説明するとCloud Marketplaceはソフトウェアやサービスの電子商取引サイトのこと（図2）。「すでに数百のソフトウェアやサービスが提供されており、その数はさらに増えます。ソリューションに関わる情報も集約します」（LeBlanc氏）。

　もう1つのBlueMixは、アプリケーションの開発や実行（運用管理）をクラウド上で完結できるようにするPaaSだ。LeBlanc氏によれば、「Cloud Marketplace上のサービスや他のクラウドサービスをビルディングブロック（部品）としてアプリケーションを組み立て、稼働させることができます」という。ビジネスをコンポーズ（組み立てる）ためのサービスやソフトウェア部品、それを実施する開発・実行環境の両方を用意しつつあるというわけだ。

　別の見方をすれば、これは「APIエコノミー」と呼ばれる開発スタイルのIBMバージョン（関連記事）。例えば利用者認証や課金管理といったネット上のサービスをAPI（アプリケーションプログラム・インタフェース）で呼び出すことで、あたかもビルディングブロックを組み合わせるようにアプリケーションを開発する。

図3：PaaSである「BlueMix」のカバー範囲。アプリケーションとデータを除くシステム要素がクラウド内で提供されるので開発生産性を高められる＝Composable Businessを実現しやすくなる
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　もちろんDBMS（Database Management System）やアプリケーションサーバー、BPM（Business Process Management）ツール、モバイル管理機能などのミドルウェアも利用できる。既存の部品を使うので、開発生産性は大幅に高まる（図3）。クラウド上で稼働させるので、最初は小規模に作り、需要が増えればスケールアウトさせる、いわゆるスモールスタート／リーンスタートができる。

　ただし企業情報システムのすべてが“コンポーザブル”になるという論理は、特に基幹業務システムを担ってきたIBMの主張として考えると、違和感が強い。「販売管理や会計など既存システムをコンポーザブルにできるのか」「できるとして意味があるのか」といった疑問が生じる。BlueMixを喧伝するための、単なるキャッチフレーズにも聞こえてしまう。この点について基調講演後、グローバルマケティングを担当するIBMのMychelle Mollot氏に確認すると次の答が返ってきた。

　「2013年のImpactでは、Systems of Engagment（SoE)とSystems of Record（SoR）、それらを統合したSystems of Interaction（SoI)という次世代情報システム像を提唱しました（関連記事）。Composable Businessは、これらのうちのSoEに軸足を置いたものです。SoEとSoRは分けて考える必要があります。今回のImpactでは、これらを自明のことにし、関係をきちんと説明していないので分かりにくいのかも知れませんね」。

「絵に描いた餅」から「食べられる餅」に、Composable Businessをクラウドで具現化

　とても大事な話なので改めて整理しておこう。まずSoE（関係を強化するためのシステム群）は、これまで企業ITの守備範囲外だった新しいタイプのシステムを指す。顧客との関係強化を狙うWebシステムや、従来技術では扱えない大規模なデータを処理・分析するシステム、あるいはモノの情報を扱うIoT（Internet of Things：モノのインターネット）などである。モバイルやクラウド、ビッグデータ、ソーシャルといった、相対的に新しいITをベースにする。

　これに対し、日常の業務効率や正確性を高めることを目的にした情報システムが、SoR（記録のためのシステム群）だ。会計や販売管理、さらに電子メールやグループウェアなどを含め、既存の情報システムは、大半がSoRの範疇に入る。ただしSoRとSoEは独立して存在するわけではない。これらを連携させ、一貫した価値を提供するSoIが、目指すITの姿である。これが、1年前のImpact2013において、IBMが提示したものだ。