日本ITCソリューションと三井商事が共同で臨む案件。大規模な案件であると同時に、競合の中国企業である北京鳳凰は“原価割れ”の、とんでもない提案を出してくる可能性があった。日本ITCソリューション課長の佐々木は、これまでの経験とは全く異なる交渉の場が待っていることに戦慄を覚えていた。対策会議の中で、三井商事の筒井は「ともかく競合相手の北京鳳凰に会ってみよう」と言い出した。
「なぜ競合企業のトップに会う必要があるのか」という佐々木の質問に対し、筒井が返答する。
「ここまで安値攻勢の対策を色々と練ってきましたが、それは我々が持つ情報の範囲内だけの考えです。ここで相手に会えば、彼らの企みがはっきりするのではないでしょうか? 彼らの動きは色々調べるにしても、実際に北京鳳凰の総経理とか董事長に合えば、どう考えているのかは、もっと明白になるでしょう。
そうなれば、安値攻勢に対して歯止めができるかもしれませんし、彼らが安値攻勢だけでなく、何か他の考えを持っているのかもしれません。相手がどういう人物であるのかが分かるだけでも、我々としては今後、動きやすくなるでしょう」
「なるほど。それはいい考えですね。『競合相手のトップに会う』という考えは持っていませんでした。確かに、相手のトップがどういう人物なのかを見定めることも重要ですね」と森山は言った。
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