デジタルビジネス時代に入り、ビジネス環境の変化は高速化している。そのスピードについていくため、新たなシステムを構築する機会や既存システムに手を入れる機会が増加している。しかし、近視眼的に改修を進めていくと、いつかそのしわ寄せが来る。そうならないために「グランドデザイン」がある。わかっていてもなかなか実践できないグランドデザインだが、右肩上がりの業績を続ける事故車買取・販売のタウが、今後を見据えてグランドデザインを策定、その第一歩を踏み出した。情報システム部長の河内山高広上席執行役員に聞いた。
事故車を海外に販売する独自のビジネスモデル
──事業内容は。
タウの設立は1997年で、主業務として損害車の仕入れ・販売を行っています。損害車とは、事故などで損傷した車両のことです。このうち、リユース可能なものが取引対象となります。ゲリラ豪雨や台風などによる水害で、水浸しになった車両がニュース映像などでよく流されていますが、あのような水没車両も対象となります。
タウでは、これら損害車の多くを海外に販売しています。国内の輸出業者が3割、アジアやロシア、中南米の事業者向けは3割程度です(図1)。国内では、損害車は中古市場でも「事故車」として価値の低いものとして扱われますが、海外では事情が異なります。損害車を修理せずに海外に提供し、現地の事業者が修理して販売するというスキームを取っています。
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──近年の業績は。
2016年9月期の売上高が212億円でした。2010年度に100億円を超えて以降、右肩上がりで業績を伸ばしています(図2)。販売台数も2009年度から伸び続け、2014年度からは年間4万5000台前後という高い水準で横ばいが続いています。タウが創業した2000年前後は世間の認知度が低く苦戦していましたが、エコ志向の高まりや自動車リサイクル法の施行などが追い風となり、成長軌道に乗ることができました。
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──現在の情報システム部の陣容およびシステム構成は。
情報システム部は現在9名です。ネットワークに関しては内製化できるよう人員を揃えています。情報漏洩リスクやシステムダウンリスクが課題で、常に稼働率100%に近づけられるよう努力しています。不測の事態への対応を自分たちで行うためです。売買がウェブサイトに依存していることや海外とのやり取りが多いことから、以前からネットワーク重視のIT施策を執ってきました。バックエンドのシステムの一部はパッケージを使い、一部はスクラッチで開発しています。具体的には、会計周りのシステムはパッケージソフトを使っています。一方、営業が買い付けしてから売るまでのフローをカバーする物流周りのシステムはスクラッチで開発しています。事故車は1台1台状態が異なるため、「究極の単品管理」が強いられる世界なのです。その独特の仕組みに流用できるようなパッケージ製品は市場にないため、スクラッチ開発を行っているという状況です。
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