[ユーザー事例]

開発人材教育にも着手、全社かつ継続的なRPA導入を進める第一生命

2018年7月9日(月)鈴木 恭子(ITジャーナリスト)

働き方改革や生産性向上の目的で、2017年10月からRPAのトライアル稼働を開始した第一生命保険。トライアル稼働では、20の所管に87のソフトウェアロボットを配置し年間で2万6722時間の業務量を代替。こうしてすでに大きな成果を上げている同社だが、今も導入効果の最大化を目指した継続的な取り組みが進んでいる。同社でRPA活用を推進するキーパーソンに、最新の取り組みや計画について聞いた。

急成長を続けるRPA、6年間で10倍の市場規模に

 国内では2017年にブレイクし、ブームと呼べる様相を呈しているRPA(Robotic Process Automation)。ご存じ、定型的なコンピュータ操作をソフトウェアロボットに代行させる業務自動化のアプローチだ。繰り返しの多い定型業務を自動化することで、人手不足の解消や、確認作業の削減などの効果に注目が集まっている。先行したのは欧州の金融機関や公共機関などだが、国内でもコストと効率性の観点から、これまでオフショアへ移管していた業務をRPAに置き換える企業が急増している。

 人気の加速ぶりは、市場調査の結果にも現れている。IT調査会社のITRが2017年10月に発表した「国内のRPA市場規模推移および予測」によると、2016年度の売上金額は前年度比4倍増の8億円で、2018年度は44億円になる見通しだ。さらに、2016~2021年度のCAGR(年平均成長率)は59.3%で、2021年度には82億円に達すると予測している。つまり、6年間で10倍の市場規模にまで成長すると見込まれている(図1)。

図1:国内のRPA市場規模推移および予測(出典:ITR、2017年10月発表)
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写真1:第一生命 事務企画部長の拝田恭一氏

 1902年創業、代表的な大手生保会社である第一生命は、個人保険だけで20~30種類以上の商品を販売している。これに売り止めをした商品まで含めると100種類を超える。同社で事務企画部長を務める拝田恭一氏(写真1)は、「生命保険商品はサービス期間が長い。特に社歴が長い我々は、多数の商品を保守する必要があり、手続きの種類だけで100を超えていました。システム化されている処理と手作業による処理が混在していたため、手続き処理をRPAで解決したいと考えたのです」と導入の背景を振り返って説明する。

 第一生命でRPA導入プロジェクトが立ち上がったのは2016年10月。実際の業務に適用可能かを確認するために、PoC(Proof-of-Concept:概念検証)から始まった。まず、人事部の主導で、RPAで標準化できる共通業務の全社レベルの洗い出しを実施。それらの業務がRPAで効果を発揮するかどうかを予測/分析し、個人保険事務を中心に、段階的な導入の検討を進めていった(図2)。

図2:RPAの活用イメージ(出典:第一生命)
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 検討は、第一生命の業務を「RPAの導入ですぐに効果が出る」「紙の書類をOCR(Optical Character Recognition)でデジタル化する必要がある」「複雑な事務処理を伴うため、ルールエンジンなどと組み合わせる」の3つに分類しながら行われ、それぞれについて導入効果の試算も行った。

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