SAPジャパンは2020年2月19日、同年4月より代表取締役社長に就任する鈴木洋史氏が会見し、新社長としての今後の抱負や、2020年に注力する5つの重点エリア、最新事例などを説明した。2019年、日本のS/4HANA新規ユーザーの6割がクラウドERPを選んだとして、今後も移行を推進するほか、ERP稼働後の定着を支援するカスタマーサクセス部門の活動を強化する。
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「2019年に日本でSAP S/4HANAを採用したユーザーの6割は、クラウドERPを使っている。今は、オンプレミスよりもクラウドを選ぶユーザーのほうが多い」。2020年4月1日付でSAPジャパンの代表取締役社長に就任する鈴木洋史氏(写真1)は、S/4HANA on Cloudが加速していることをアピールした。
会見で鈴木氏は、SAPジャパンの今後の抱負と、2020年に注力する5つの重点エリアを説明した。今後の抱負の1つは、カスタマファーストである。SAPジャパンは2019年1月から、ERP稼働後の利活用や定着を支援する、カスタマーサクセス部門を組織している。現在50人弱の組織であり、今後も注力する。
SAPジャパンが2020年に注力する重点エリアは5つ(図1)。ナショナルアジェンダ(社会的な課題)、デジタルエコシステム、日本型Industrie 4.0、クラウド、エクスペリエンスマネジメント(体験管理)である。
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1つ目のナショナルアジェンダ(社会的な課題)においては、例えば建設業向けに「ランドログERP」を提供する(関連記事:NTTドコモとSAPジャパン、中小・中堅建設業向けクラウドERP「ランドログERP」を共同開発)。また、大分県において防災のための情報活用基盤を構築する取り組みなどもある。
2つ目のデジタルエコシステムでは、SAPエンジニアの拡充などの活動を推進する。SAP ERP 6.0を利用するユーザーにとって目下の課題だった「SAP2025年問題」だが、先日、サポート期限が2年延長された(関連記事:SAP、S/4HANAへの移行期限を2年延長し2027年末に、顧客の要望を受けて決定)。猶予期間が出来たととらえることもできるが、SAPのノウハウを持つエンジニア数の不足に変わりはなく、エンジニアの拡充には期待がかかる。
3つ目の日本型Industrie 4.0に対しては、例えば、日本固有の要件を製品の機能として取り込む活動を行う。スマート工場を実現するプロトタイプの開発なども行っている。
4つ目のクラウドに対しては、引き続きユーザーのクラウド移行を推進する。「ユーザーが経営に集中してITシステムについて考えなくてもよいようにするには、クラウド移行が重要になる」と鈴木氏。冒頭で触れたように、2019年、日本でS/4HANAを採用したユーザーの6割がすでに同ERPをクラウドで稼働している。
5つ目のエクスペリエンスマネジメントは、新たな取り組みである。「ERPを使えば『だれが、何を、いつ、どこで買ったか」はわかる。しかし、『なぜ、買ったのか』については仮説を立てるしかなかった。エクスペリエンスマネジメントは『なぜ』を定量化して分析し、顧客や従業員にエクスペリエンスを提供する」(鈴木氏)
既報のとおり、独SAPは、エクスペリエンスマネジメントツールを提供する米クアルトリクス(Qualtrics)を買収し、自社のポートフォリオに加えている(関連記事:SAP、クアルトリクスの買収を発表、業務アプリ群の「エクスペリエンスマネジメント」を強化へ)。
非製造業が急成長、現在は製造業と非製造業の売上は半々
鈴木氏がSAPジャパンに入社したのは2015年1月で、最初に担当した業界は小売業界である。鈴木氏によると、2015年当時、日本の小売業においてSAPの実績は少なく、多くの小売業はスクラッチで開発した基幹システムを使っていたという。
振り返った後、「こうした状況が変わった」と鈴木氏。基幹システムを刷新するにあたって、効率化の機運が高まった。大手百貨店の採用を皮切りに、アパレル、ドラッグストア、食品スーパーなど様々な業態でS/4HANAの採用が増えた。
●Next:アパレル製造小売、食品スーパー、そして2020年1月導入の直近事例
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