米IBMは2020年8月20日(米国現地時間)、量子コンピュータの処理性能のロードマップとして、これまでの2倍となる「量子ボリューム64」を達成したと発表した。新しいソフトウェア/ハードウェア技術を組み合わせて全体的な性能を改善し、顧客に提供している現行の27量子ビットのシステムのうちの1台をアップグレードして量子ボリューム64を達成している。
米IBMは、量子ゲート型の量子コンピュータシステム「IBM Q」(写真1)を開発し、クラウドサービスとして提供している。2020年7月時点で、同社が保有する最も高速なコンピュータは量子ビットが53ビットで、量子コンピュータの性能指標である量子ボリュームの値は32だった。
今回、新しいソフトウェア技術を組み合わせて量子コンピュータの全体的な性能を改善し、27量子ビットのシステムのうちの1台をアップグレードした。これにより、これまでの2倍となる、量子ボリューム64を達成した。
同社は、性能を強化するため、ハードウェアの知識に基づいて量子ボリュームの回路を最適に動かすための、新しいソフトウェア手法や改善に焦点を当てた。これらの工夫は、近日中にリリースを予定しているIBM Cloudのソフトウェアサービスや、オープンソースのソフトウェア開発キット「Qiskit」で利用できるようになる。
なお、量子コンピュータの有用性とは、ある特定の情報処理タスクに対し、古典的なコンピュータよりも量子コンピュータの方が効率性も費用対効果も高く実行できるようになる段階に到達することである。このためには、量子アプリケーションの基本構成単位である量子回路を改良する必要がある。
量子ボリュームは、回路の長さや複雑さなどの性能指標を表している。量子ビットの制御と読み出しに関わるエラー、デバイス間の接続性や混信、ソフトウェアのコンパイラ効率なども考慮している。量子ボリュームの値が高いほど、産業、政治、研究などにわたる現実世界の問題の解決策を探求できる可能性が高くなる。
日本IBMでは、「量子ボリュームの値は1年に2倍のペースで増え続ける」と説明している(関連記事:量子コンピュータの性能は1年に2倍のペースで増え続ける―日本IBMが説明)。