[海外動向]
有力ITベンダーが相次ぎM&A、拡大を続けるプロセスマイニングツール市場
2021年8月17日(火)田口 潤、杉田 悟(IT Leaders編集部)
大手ITベンダーによるプロセスマイニングツールベンダーの買収が相次いでいる。米UiPath、独SAP、米IBMに続き、今度はローコードアプリケーションプラットフォーム(LCAP)の有力ベンダーである米Appianが独Lana Labsの買収を発表した。背景には、企業におけるビジネスプロセスの抜本的な見直しやデジタライゼーション、その先にあるデジタルトランスフォーメーション(DX)がある。
定型的なビジネスプロセスをシステム化するLCAP
米バージニア州に本社を置くITベンダーのAppian(アピアン)が2021年8月5日、プロセスマイニングツールを提供する独Lana Labsを買収すると発表した。Appianはいわゆるローコードアプリケーションプラットフォーム(LCAP:Low Code Application Platform)の有力ベンダーであり、買収によって自社のLCAPに欠けていた機能を補完する。企業のビジネスプロセスの高度化をサポートするのが狙い。同年7月26日に日本法人を設立しており、日本企業にとっても選択肢になりそうだ。なお買収額は公表されていない。
一口にLCAPと言っても、基幹業務向けや非定型業務向けなどいろいろあるが、Appianは定型的なビジネスプロセスをシステム化するLCAPが主力。調査会社である米ガートナーの「Magic Quadrant for Enterprise Low-Code Application Platforms」では2019年、2020年と連続してリーダーに位置する(図1)。同社について米ガートナー(Gartner)は「strength is its rich process-driven application development」(強みはリッチなプロセス駆動型のアプリケーション開発である)と記している。
拡大画像表示
評価の詳細はさておき、AppianのLCAPは各種のワークフローマネジメント、ビジネスルールの実装、ケースマネジメントといった機能を備える。これらによりシステム化されずにいた基幹業務の周辺業務や基幹業務同士を連携した業務を効率的にシステム化する。2019年5月にAI機能をリリースしており、プロセスの自動化や判断をAIで行えるようにした。2020年1月にはRPAツールを提供するスペインのNovayre Solutionsを買収し、RPAもLCAPの1機能として提供できるようにしつつある。
基本的には大企業向けで、AppianのWebサイトによると金融関連や公共、製薬・ヘルスケア、通信などの業界に強みを持つ模様だ。例えば金融業における買掛金承認や商品管理、与信管理、製薬では臨床業務管理、安全情報管理などのアプリケーション開発に利用されている。顧客リストには米食品医薬品局や独バイエル、英Aviva、T Mobileなどが名を連ねる(図2)。
拡大画像表示
一方、そんなAppianが買収したLana Labsは、2016年に独ベルリンで創業したプロセスマイニングツール専業ベンダー。提供するソリューション「LANA」はプロセスの発見(視覚化)や適合性チェック、KPIモニタリングといった一通りの機能を備える。プロセスマイニングでは後発だけに、それらに加えて機械学習によってプロセスの問題を把握するための根本原因分析(Root-Cause-Analysis)を強みとする。
この買収によって、Appianは欠けていたピースを埋めることができる。主力のLCAPで開発・稼働させる様々なアプリケーションによるビジネスプロセスをLANAでマイニングし、問題を発見してLCAPで強化・拡充するという、好循環のサイクルを実現しやすくなるからだ。
●Next:なぜITベンダーはプロセスマイニングツールを必要とするのか?
会員登録(無料)が必要です
- 1
- 2
- 次へ >