香港での交通カードシステム刷新という大型案件。競合する北京鳳凰に対抗するための戦略を日本ITCソリューション課長の佐々木と、香港支社副社長の森山は、孫子の兵法に沿って練っていた。交渉を有利に進めるために台湾人や中国の大連陣などを味方に付ける、安値攻勢に対応するためには相手の信用を得て懐に入る、そして勝つための計画をしっかり算段し勝てるような机上作戦などだ。佐々木はさらに、孫子の兵法の講義を続けた。
「机上作戦の詰めが甘ければ勝てません。最終的に、どこにもって行こうとするのか、そのためには、どんな戦術を使えば良いのか。それが、私が先に挙げた5つの視点ではないでしょうか(第13回『彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず』参照)」と佐々木は述べ、話を続けた。
「ここに来る前から今回の入札は勝てないと思っていたのですが、三井商事の筒井さんの話を聞いてからは、その思いはますます強まっていました。これまで、このアジアで日本企業が中国企業に勝てた事例は数多くありません。先日もインドネシアで大口のアルミナ工場の建設で、日本企業は中国企業に負けてしまったという話を聞きました。
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彼らの華僑商法のやり口は様々ですが、そのベースは、孫子の兵法と三十六計です。基本的な要素は『とんでもない安値』『はったり』『根回し』『コネ』『裏取引』『デマ情報』『賄賂』であり、これらを組み合わせるのです(図1)。
彼らの強さは、こうした戦術とか奸計を小さなときから身に付けていて、それらを意識せずに使えることです。そうした教育を受けていない日本人には、そんな策略を見破れないのです」
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