[CX(Customer Experience)デザインの基礎知識]
「自社の顧客は誰か」を明確にする「ペルソナ」と「ステークホルダーマップ」:第4回
2016年7月25日(月)飯塚 純也(ジェネシス・ジャパン コンサルティング本部 本部長 サービスデザイナー)
顧客体験を最適化するためのCX(カスタマーエクスペリエンス)デザイン。前回は、CXデザインを実際に進めていくためにフレームワークである「ダブルダイヤモンド」を紹介しました。今回からは、ダブルダイヤモンドにおけるセッション内容をより具体的に説明していきます。まずは「自分たちの顧客は誰か」を明確にしなければなりません。その導き出すツールとして「ペルソナ」と「ステークホルダーマップ」があります。
ペルソナの周りにいる関係者を
「ステークホルダーマップ」で描き出す
ペルソナの作成では、ペルソナにとっての利害関係者(ステークホルダー)が誰かを知ることも重要です。それを可視化するために、「ステークホルダーマップ」を作成することがあります。ステークホルダーマップは、ペルソナに対し、CXもしくは、他の何らかの形で関与する多様な関係性を図解し、それぞれの相関関係を分析するためのツールです。
ここでいうステークホルダーとは、商品購入やサービス利用の意思決定に影響を及ぼす関係者(インフルエンサー)のことです。マーケティング活動においては、インフルエンサーが誰かを知ることが非常に重要です。例えば、子ども向け商品を扱う会社では、実際の購入に影響を及ぼす保護者などに対して情報提供することが有効なケースがあります。
どの範囲までステークホルダーを可視化すればよいかは、ペルソナでどんな顧客像を描くかによって変わってきます。いわゆる平均的な顧客層から抽出されたペルソナであれば、年齢や性別、職業といったセグメントごとに、交流範囲というのも、ある程度は標準化できます。ビジネスによっても異なりますが、ある程度の事業規模があるB to C(Business to Consumer:企業対個人)ビジネスであれば、顧客に対するステークホルダーは、盲信はできませんが、ある程度見えていることが多いです。
ペルソナのライフサイクルを追い掛ける
ペルソナやステークホルダーマップを作っても、それらを活用しなければ“絵に描いた餅”になってしまいます。ペルソナが活用されない理由としては、ペルソナ自体のライフサイクルが考えられていないことが挙げられます。ビジネスが常に動いているのですから、その動きに合わせてペルソナにもライフサイクルがあるのです(図3)。
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ペルソナのライフサイクルにおいて特に重要なのが、上記のステップ5に位置する「検証」です。実際には存在しようがない人物像をペルソナとして描いてしまうリスクがあるからです。例えば、顧客セグメントに「10代の顧客層」と「60代の顧客層」があった際に単純に平均値を求めると、実際には存在しないかもしれない「30代の顧客層」をペルソナとしてしまうことがあります。ですので、データの頻度分布を見たり中央値を算出したりするなどのデータ活用が求められます。
必要に応じてペルソナは複数作るのが一般的です。CX最適化の目的が、革新性の重視や、サービスの行き詰まりを打破するブレイクスルーの実現にあるときは、ヘビーユーザーなど“振り切った”顧客層をペルソナにし、そこに特化したサービスを開発することがあります。一方、平均的な顧客層に対するサービスを拡充したいときは、サービスとしてはエッジの効いたものにはならないかもしれませんが、中間的な顧客層をペルソナに設定します。
データをもとにペルソナの妥当性を検討したり、ペルソナにどの顧客層を選ぶかを検討したりを繰り返すことで、ペルソナを実在の顧客に近づけていくことが重要です。ペルソナのライフサイクルを意識し、作ったら終わりにせず、自社のCXを最適にするための有効なツールとして長く活用したいものです。
次回は、顧客の商品購入やサービス利用までのプロセスを時間軸でマッピングすることでCXを可視化する「カスタマージャーニーマップ」の作り方を説明します。
筆者プロフィール
飯塚 純也(いいづか・じゅんや)
ジェネシス・ジャパン コンサルティング本部 本部長 サービスデザイナー。上質なCX(Customer Experience:顧客体験)を通じて企業が、より良い顧客サービスをいかに提供できるかを考え、その方法を提案している。コンタクトセンター業界で15年以上にわたり、システムエンジニア、エヴァンジェリスト、コンサルタントなどの職種を経験。多彩な経験を元に、コンタクトセンターやCX分野のサービス設計に注力し、企業における顧客価値向上に取り組んでいる。コンタクトセンター業界誌への連載や講演を通しても、分かりやすく解説している。
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