2016年10月の3本：AWSがVMwareおよびSalesforce.comと協業／NECとGEがIoT分野で包括的提携／米国でネットサービスに大規模なDDoS攻撃

2016年11月9日(水)松岡功（ジャーナリスト）

リスト

2016年10月のニュースから松岡功が選んだのは、「AWSがクラウド事業でVMwareおよびSalesforce.comと協業」「NECとGEがIoT分野で包括的提携」「米国でネットサービスに大規模なDDoS攻撃が発生」の3本である。

　GEは「Industral Internet」の推進母体であり、グローバルに産業向けプラットフォーム「Predix」を展開している。一方のNECは、システムインテグレーション（SI）や、その運用のための技術と実績を持ち、人工知能（AI）やIoTといった分野の技術も有している。両者は協業により、日本企業に向けてIoTソリューションの開発から導入、保守サポートまでの一貫した体制を構築する。先進かつ高信頼なIoTソリューションを提供し、ユーザー企業のデジタルトランスフォーメーションの促進を狙うという。

［選択理由］

　Predixによって製造業を中心とした産業向けIoT活用の「グローバルプラットフォーマー」になりつつあるGE。今回、NECが組んだことで、日本でのPredixをベースにしたIoT活用に弾みがつく可能性が高いからだ。

　両社の提携については、「NECがGEの販売代理店になっただけ」との見方もある。だがNEC関係者は、GEと提携している他の複数のITベンダーと比べ「最も包括的である」点を強調する。「GEがIoTの分野で、技術、製品・サービスSI、保守サポート、マーケティング、販売、人材育成にわたって提携したのはNECだけだ」という。

　この提携は、とりわけNECにとってGEのプラットフォームをベースに産業向けIoT分野でのグローバル進出の足がかりになることは間違いない。その意味では、日本のITベンダーが今後グローバル市場で生き残っていくための戦略の取り方を示唆しているともいえそうだ。

米国でネットサービスに大規模なDDoS攻撃が発生

　米国で2016年10月21日、Amazon.comやTwitter、Netflix、PayPalなどのネットサービスがおよそ6時間にわたって大規模なDDoS攻撃を受け、いずれもサービスが利用できない状態に陥った。各社のサービスを利用するのに必要なドメインを運用するためのDNS(ドメインネームシステム)を提供するプロバイダーであるDynが攻撃を受けたのが原因だった。規模模の大きさから組織的な動きがあるとみて、FBI（連邦捜査局）とテロ対策などを担うDHS（国土安全保障省）が捜査に乗り出している。

　専門機関によると、Dynに対するDDoS攻撃は「Mirai」というマルウェアを用いたボットネットが行っていることが判明した。

［選択理由］

　これまでにない大規模なDDoS攻撃であるとともに、MiraiというマルウェアがIoTデバイスをターゲットにしたものだからだ。IoTのセキュリティで懸念されていたことが、いよいよ現実になったといえる。Miraiは、ルーターやWebカメラ、監視カメラ、デジタルビデオレコーダーなどのデバイスに感染するだけに対策が急がれる。

　今回の攻撃は組織的な可能性が高い。セキュリティ対策にとどまらず、政府として社会として、こうした問題にどう対処していくべきかを真剣に考え、取り組むべき時が来ている。

筆者プロフィール

松岡功（まつおか・いさお）
ジャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアでコラムや解説記事を執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』（日刊工業新聞社、共著）、『新企業集団・NECグループ』（日本実業出版社）、『NTTドコモリアルタイム・マネジメントへの挑戦』（日刊工業新聞社、共著）などがある。