[市場動向]

Preferred Networksのスパコン「MN-3」が電力当たり性能の「Green500」で3度目の1位に

消費電力1W当たり毎秒393億回の浮動小数点演算

2021年11月16日(火)日川 佳三(IT Leaders編集部)

Preferred Networks(PFN)は2021年11月16日、ディープラーニング(深層学習)用途のスーパーコンピュータ「MN-3」が、最新の「Green500」リストで3度目の世界1位を獲得したと発表した。消費電力1ワット当たりのLINPACK性能は39.38GFLOPS(毎秒393.8億回の浮動小数点演算)で、前回の29.70GFLOPSと比べて約32.59%向上している。前々回(2020年11月)は2位だったが、前回(2021年6月)と3回前の回(2020年6月)は1位であり、今回3度目の1位になった。

 Preferred Networks(PFN)の「MN-3」は、ディープラーニング(深層学習)用途のスーパーコンピュータである。PFNが神戸大学と共同で開発した低消費電力のディープラーニング(深層学習)用プロセッサ「MN-Core」を採用している(関連記事PFN、3機種目のディープラーニング用スパコンを2019年7月に稼働、合計で200PFLOPSに写真1)。

写真1:Preferred Networksのスパコン「MN-3」の外観写真1:Preferred Networksのスパコン「MN-3」の外観(出典:Preferred Networks)
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 今回、スーパーコンピュータの電力当たり性能ランキング「Green500」(2021年11月に発表した最新のランキング)で1位を獲得した(図1)。Green500は、TOP500リストのLINPACK性能を消費電力で割り、1ワットあたりの性能を比較したリストである。いかに省電力で動作するかを示している。

図1:1ワットあたりのLINPACK性能を比較した「Green500」リスト最新版(2021年6月)のWeb画面図1:1ワットあたりのLINPACK性能を比較した「Green500」リスト最新版(2021年6月)のWeb画面
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 MN-3の1ワット当たりのLINPACK性能は39.38GFLOPS(毎秒393.8億回の浮動小数点演算)だった。LINPACK性能(TOP500リスト)は、301位の2181.2TFLOPS(毎秒2181兆2000億回)で、消費電力は55.39キロワットである。39.38GFLOPS/Wは、前回(2021年6月)のMN-3の記録である29.70GFLOPS/Wを約32.59%上回っている(表1関連記事Preferred Networksのスパコン「MN-3」が電力当たり性能の「Green500」で1位に返り咲き)。

表1:MN-Coreのシステム構成と演算性能の推移
  2021年11月 2021年6月 2020年11月 2020年6月
ノード数 32ノード 40ノード
MN-Core数 128個 160個
CPUコア数 Intel Xeon 1536個 Intel Xeon 1920個
ピーク性能(理論値) 3390 PFLOPS 3138 PFLOPS 3.92 PFLOPS
LINPACKベンチマーク値 2181 PFLOPS 1822 PFLOPS 1653 PFLOPS 1.621 PFLOPS
1ワット当たりの性能 39.38 GFLOPS 29.70 GFLOPS 26.04 GFLOPS 21.11 GFLOPS
Green500ランキング 1位 1位 2位 1位

 今回測定に使ったシステムは、MN-3全体のうち32ノード(MN-Core 128個)で、前回と同じである。MN-Coreは2020年5月の運用開始から同一のものを使っているが、ソフトウェア制御のさらなる効率化、MN-Core同士を相互接続する専用インターコネクトの改善などによって、前回(2021年6月)と比較して計算能力が19.70%、電力効率が32.59%向上した。

 PFNは、LINPACKベンチマークの性能向上と並行して、MN-Core専用コンパイラの開発など、MN-3を活用した、より実用的な深層学習のワークロードの高速化を進めている。ハードウェアとソフトウェアの両面から開発を進めることで、画像認識や材料シミュレーションなどPFNが取り組む各種の研究開発にMN-CoreおよびMN-3を活用し始めている(関連記事PFN、深層学習用プロセッサ「MN-Core」のコンパイラを開発、実用アプリを6倍以上に高速化)。

 Green500リストのトップ50入りしたPFN以外の日本企業は、以下のとおり。

  • 12位:NA Simulationの「NA-IT1」(24.582GFLOPS/W)
  • 15位:東京大学情報基盤センターの「Wisteria/BDEC-01(Aquarius)」(24.058GFLOPS/W)
  • 19位:産業技術総合研究所の「ABCI 2.0」(21.892GFLOPS/W)
  • 22位:理化学研究所の「富岳」のプロトタイプで富士通の沼津工場に設置した「A64FX prototype」(16.876GFLOPS/W)
  • 26位:理化学研究所の「富岳」(15.418GFLOPS/W)
  • 30位:東京工業大学の「TSUBAME3.0」(13.704GFLOPS/W)
  • 50位:海洋研究開発機構の「地球シミュレータ」(7.183GFLOPS/W)
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