[市場動向]
Preferred Networksのスパコン「MN-3」が電力当たり性能の「Green500」で1位に返り咲き
2021年6月29日(火)日川 佳三(IT Leaders編集部)
Preferred Networks(PFN)は2021年6月29日、ディープラーニング(深層学習)用途のスーパーコンピュータ「MN-3」が、最新の「Green500」リストで1位になったと発表した。消費電力1ワット当たりのLINPACK性能は29.70GFLOPS(毎秒207億回の浮動小数点演算)である。前々回(2020年6月)が1位、前回(2020年11月)は2位だったが、今回1位に返り咲いた。
Preferred Networksの「MN-3」は、ディープラーニング(深層学習)用途のスーパーコンピュータである。PFNが神戸大学と共同で開発した低消費電力のディープラーニング(深層学習)用プロセッサ「MN-Core」を採用している(関連記事:PFN、3機種目のディープラーニング用スパコンを2019年7月に稼働、合計で200PFLOPSに、写真1)。
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今回、スーパーコンピュータの性能ランキング「Green500」(2021年6月に発表した最新のランキング)で1位を獲得した(図1)。Green500は、TOP500リストのLINPACK性能を消費電力で割り、1ワットあたりの性能を比較したリストである。いかに省電力で動作するかを示している。
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MN-3の1ワット当たりの性能は、29.70GFLOPS(毎秒207億回の浮動小数点演算)だった。LINPACK性能(TOP500リスト)は、336位の1822.4TFLOPS(毎秒1822兆4000億回)で、消費電力は61.36キロワットである。29.70GFLOPS/Wは、前回(2020年11月)のMN-3の記録である26.04GFLOPS/Wを14.05%上回っている(表1)。
2021年6月 | 2020年11月 | 2020年6月 | |
---|---|---|---|
ノード数 | 32ノード | 40ノード | |
MN-Core数 | 128個 | 160個 | |
CPUコア数 | Intel Xeon 1536個 | Intel Xeon 1920個 | |
ピーク性能(理論値) | 3138 PFLOPS | 3.92PFLOPS | |
LINPACKベンチマーク値 | 1822PFLOPS | 1653PFLOPS | 1.621PFLOPS |
1ワット当たり性能 | 29.70GFLOPS | 26.04GFLOPS | 21.11GFLOPS |
Green500ランキング | 1位 | 2位 | 1位 |
今回測定に使ったシステムは、MN-3全体のうち32ノード(MN-Core 128個)で、前回と同じである。MN-Coreの演算性能をより効率的に引き出すためのソフトウェアの改良と、計算機システム全体の電力利用の効率化によって、性能を向上(計算能力で10.25%、電力効率で14.05%向上)させた。
MN-3が初めてGreen500リストに載った前々回(2020年6月)の記録と比べると、演算に利用しているMN-Coreは同一だが、省電力性能は40.7%向上している。前々回の記録は、当時で歴代1位となる21.108GFLOPS/Wである(関連記事:Preferred Networksのスパコン「MN-3」が電力当たり性能の「Green500」で歴代1位に)。
PFNは、LINPACKベンチマークの性能向上と並行して、MN-Core専用コンパイラの開発など、MN-3を活用した、より実用的な深層学習のワークロードの高速化を進めている(関連記事:PFN、深層学習用プロセッサ「MN-Core」のコンパイラを開発、実用アプリを6倍以上に高速化)。
Green500リストの日本企業としては、16位にスーパーコンピュータ「富岳」のプロトタイプで富士通の沼津工場に設置した「A64FX prototype」(1ワット当たり毎秒16.876GFLOPS)がランクインした。富岳は、20位の15.418GFLOPS/Wだった。24位には東京工業大学の「TSUBAME3.0」(13.704GFLOPS/W)、45位には海洋研究開発機構の「地球シミュレータ」(7.183GFLOPS/W)がランクインした(関連記事:スパコン「富岳」のプロトタイプが消費電力性能ランキング「Green500」で世界1位に)。
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