[加藤恭子のマーケティング志向で行こう!]

ステキなマーケティング? いえいえ違うんです─「ステルスマーケティング」

2012年4月26日(木)加藤 恭子(ビーコミ 代表取締役)

「ステマ」という言葉を知っていますか? 答えを言えばステマとは「ステルスマーケティング」の略です。ステルスは「隠密に」という意味で、レーダーで発見しづらい軍用機を「ステルス戦闘機」と呼ぶのは、よく知られたところでしょう。

 では、ステマは? これは企業側の宣伝だと分からないような形で行われるマーケティング手法を指す言葉で、ネガティブな意味で用いられています。宣伝だと明かさず、あくまでも利害関係がいっさいない一般の人を装ってネットに書かれたクチコミが、ステマの典型例です。

 ステマが注目を集めるきっかけになったのは、グルメ情報サイト「食べログ」を巡って起きた一連の騒動でした。食べログはお店に訪れた人が5つの星で料理などを評価し、コメントや写真を残すサイトです。宣伝ではなく実際に食べた人の評価を参考にできるとあって人気が高まり、その影響力と言えば、食べログの順位によって店舗の売上げを左右するほどです。

 ただ、ある料理の専門店が建ち並ぶ地域で特定の1店舗にだけ行列ができるという、少し不思議な現象が見えてきたのです。その店舗は食べログで上位にランキングしており、高評価を信じた消費者が行列をなしていました。調べてみると、「○円で食べログのランキングを上げますよ」と言って飲食店に営業する業者が複数いる事実が判明。行列ができていた店は、そうした業者にお金を払ってコメントを書いてもらっていたわけです。食べログを運営するカカクコムも、クチコミの仕組みを営業に使う業者が複数存在すると明かし、「クチコミは“やらせ”だった」ということで騒ぎになりました。

 その後、ステマが食べログ以外でも横行している実情が話題になったのは、皆さんご存じのとおりです。芸能人がブログで特定商品の写真を掲載して「この商品いいね。いつも使ってます」と不自然にアピールしていたり、いくつかのブログにほぼ同じ内容の記事が載っていたなど、ステマと思われても仕方ないような例がいくつも出てきました。iPhoneアプリのレビューでは、仲間内で書いたと思われる極めて肯定的なコメントや、ライバル会社が書いたと思しき異常なまでに批判的なコメントもあるそうです。

 広告だと分かっていれば、私たちは商品やサービスをアピールする情報に触れても、あまり違和感を覚えません。どんなに絶賛する内容でも「広告だから大げさに誉めているのだろう」と、差っ引いて受け取るからです。芸能人が商品を手して微笑んでいても、それが広告なら嫌な気持ちになりません。

 ところが広告(お金が支払われている)にも関わらず、記事やクチコミを装っている情報に対する感覚はまったく違います。クチコミだと信じて評判の商品を買ったりレストランに行った結果、期待が裏切られると「だまされた」という不快な気分になるものです。

 最近では、不自然さを見抜いてやらせを見破るポイントも出回っています。

「文章がうますぎる」「やたらたくさん写真が出ている」「すごく誉めている」「同じチェーン店の離れた支店のことも誉めており、その文面が同じ」「特定のお店のみを絶賛している」などです。

●Next:企業ITのマーケティングで効果をもたらす手法は?

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