[加藤恭子のマーケティング志向で行こう!]

事例公開って得なの? 損なの?

2012年6月21日(木)加藤 恭子(ビーコミ 代表取締役)

「ハロー効果」という言葉をご存じですか。極めて大ざっぱに説明すると、ある事象がもたらす心理的な働きかけが、他の事象の評価に影響を及ぼす現象のことです。皆さんの身近なところだと、IT製品/サービスの導入事例にハロー効果を垣間見ることができます。同業他社の成功事例を知ると、自社での成功イメージが沸いてくる。その事例が業界切っての有名企業なら、製品/サービス自体も優れているような印象を受ける。そんな経験はありませんか?

このハロー効果、ベンダーにとってメリットが大きいことは言うまでもありませんね。導入事例として社名を公表させてほしい。プレスリリースを出したい。事例カタログを作成したい。セミナーで講演してほしい。ベンダーはあらゆる形態で協力してもらえるユーザー企業を探していますが、情報システム部長から承諾が得られず日々苦労しています。「宣伝に使われるのは御免だ」「安定稼働前で忙しいんだ」と、けんもほろろ、なんてことも…。

私はかつて、ERPパッケージなど企業向けIT製品を扱うベンダーで、10年ほどマーケティング業務を担当していました。当然、導入事例として発表させていただくために多くのお客さまを訪問したのですが、なかなか良い返事をもらえなかった経験があります。協力が得られるまでに1年以上通い続けたケースを挙げたらキリがありません。

その一方で「どんどん公開してもらって構わないよ」と前向きな情報システム部長もいらっしゃいました。「製品/サービスを選んだ責任者として、長期にわたってシステムを安定稼働させる責任がある」と考えてのことです。

どちらのスタンスを採るかの判断は難しいところですが、いやらしく損得で考えてみましょう。

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