企業ITに携わるプロフェッショナル達に、自分の書棚から特に印象に残っている3冊を選んでもらう「私の本棚」。今回は、楽天 グループシェアードサービス開発・運用部 部長の景山均氏に聞いた。
忙しくてなかなか時間が割けないのですが、それでも週に1度は大型書店に足を運ぶように努めています。週刊誌、ビジネス書、小説といったコーナーを順に巡って新刊をチェックするのが毎度のパターンかな。
書店って、世のトレンドや関心事が凝縮された空間だと思うんですよ。今はどんな時代なのか。例えば週刊誌の表紙に踊るタイトルを眺めて回るだけでもかなり勉強になりますね。
気になる本があると手に取って導入部を読んでみるんですが、すぐ没頭してしまうタチなのか、気が付くと半分以上ページを繰っていることもあります。時計を見ると数時間経っていてビックリなんてこともざらですよ。で、先が気になる場合は購入して、家で読破するってわけです。
小説からノウハウ本、そして漫画に至るまでジャンルを問わずに乱読します。そんな中から、私なりに役立っていたり、印象に残っていたりする作品を思い起こしてみました。
まずは「ハーバード流交渉術」。まだ社会人になって間もない頃のことです。大手ITベンダーでマーケティング関連の仕事に就いていたいたんですが、先輩が同行してくれたのも最初の一定期間のみで、やがて単独で様々な交渉の場に駆り出されるようになりました。
そんな時、どう行動すべきかを学ぼうと思って当時話題になっていた本を手に取ったんです。その後、ロングセラーになり、今では新訳本や文庫本も手に入るようになりました。
内容を一言で表すと、表面的な駆け引きではなく、関係者の本質的な利害を考えて交渉を進めるコツが分かりやすく解説されています。例えば買収や提携交渉をする場合、ともすると最初から対立の構図でとらえがちなんだけど、それじゃ疲弊してしまう。両者が満足する道を探る柔軟な考えの持ち方を本書は示唆してくれます。簡単には言い尽くせませんが、今でも私の仕事の根幹に影響を与えている一冊です。
お堅い作品ばかり並ぶのも何なんで、次はぐっと趣向を変えて「課長島耕作」を挙げようかな。まだ学生の時分、週刊モーニングに連載されていた頃からのファンです。“社会人”って、ただ仕事をこなすだけじゃなくて、色々な人間模様やしがらみがあるんだなぁと感じつつ、自分の身にはどんなことが起こるんだろうと思いを巡らせたのをよく覚えています。
彼が取締役、常務、専務、社長として活躍する一連のシリーズは、今なおコミックスで読み返すこともあります。時間が経ってから目を通すと、かつてとは違う感想を抱くのも面白い。意地悪な上司キャラに何故か親近感が湧いたりね(笑)。
最後は「エスキモーに氷を売る」。タイトル通りの命題を与えられた場合、「そもそも氷に囲まれた人々に売れるわけない」と考えるか、それとも「氷を生活に取り入れる習慣が根付けば広大なマーケットがある」と考えるか。元来、ポジティブな性格なんで、考え方1つで仕事ががらりと面白くなるという視点は大好きですね。仕事がつまらないと感じるのは不幸なこと。常に前向きになるためにお勧めです。
課長島耕作(1)
新装版 [文庫]
弘兼憲史 作
ISBN: 978-4063606348
講談社
777円
エスキモーに氷を売る
─魅力のない商品を、いかにセールスするか
ジョン・スポールストラ著、中道暁子訳
ISBN: 978-4877710583
きこ書房
1680円
- 景山 均氏
- 楽天 グループシェアードサービス開発・運用部 部長
- 2007年5月楽天株式会社入社。会員管理/ポイント/メール配信/検索/マーケティングDWH/広告配信などの共通プラットフォームやデータセンター/ネットワークなどのインフラ、物流/ネットスーパー/結婚情報サービス/電子マネーなどの開発部隊を統括してきた。2012年2月より現職。一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム理事
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