ITリーダーに贈るMOOCキャンパスガイド(1)―Udacity

2013年10月22日(火)三国大洋

リスト

新時代のオンライン講義プラットフォーム「MOOC（Massive Open Online Course」の存在自体は知っているが、まだ体験したことがないという読者も少なくないだろう。そんな読者に、編集部から背中を押させていただくというのが「ITリーダーに贈るMOOCキャンパスガイド」の趣旨だ。ここでは、3大MOOCプラットフォームの1つである「Udacity」の概要と必聴のオススメ講義を紹介しよう。 (2)Coursera編｜(3)edX編

UdacityでITリーダー必聴の講座はこれだ！

「The Design of Everyday Things」
https://www.udacity.com/course/design101
講師：ドナルド・ノーマン氏

The Design of Everyday Things

　Udacityのコースリストには現在、30近い講座が並んでいる。「コンピュータ・プログラムの設計（Design of Computer Programs）」や「ソフトウェアのテストについて（Software Testing）」など、IT関係の仕事に就く知識欲旺盛な読者の目には知の宝庫と映るのではないだろうか。

それら以外にも、設立者のスラン氏が自ら教える「ロボット工学のための人工知能（Artificial Intelligence for Robotics）」や「統計学入門（Introduction to Statistics）」、あるいはスティーブ・ブランク（Steve Blank）氏による「成功する起業の手引き（How to Build a Startup）といった講座もある。ブランク氏は、『アントレプレナーの教科書』『スタートアップ・マニュアル』といった著書を持つシリアル起業家で、Udacityのアドバイザーも務めている（※5）。

これらの中から、オススメの1つを選ぶのはなかなか難しいが、ここではあえてデザイン・設計関連の講義「The Design of Everyday Things」を必聴としたい。理由は、この講義のインストラクターの1人がドナルド・ノーマン（Donald Arthur Norman）氏だということだ（※6）。講義のタイトルも氏の著作『日用品のデザイン（The Design of Everyday Things）』と同じである。

認知科学分野の先駆け的な存在であるノーマン氏だが、『誰のためのデザイン？』などの著作が、ソフトウェア開発者やWebデザイナーの間で必読書だった時期がかつてあった。また、ある時期まで同氏は、「システムベンダーが顧客の企業IT管理者（直接の顧客）のことを念頭に置いて作った社内システムというものは（それぞれがコンピュータに詳しいせいで）、実際にそのシステムを使う社内の人間には、かなり敷居が高い（要は使いづらい）」などとも主張していた。

「仕事だから使い方を覚えるのが当たり前」とされ、万人にとって使いやすいデザインという観点にあまり注意が払われていないシステムはもちろん今でも存在する。そんな理由からせっかく導入した社内システムが十分に活用されていないとしたら、これは企業の競争力に直接影響する問題である。加えて今では、ソーシャルネットワーキング系のツール類を使った社内の情報共有なども励行されるようになり、販売管理、営業案件管理といった業務システムにおいても、従来とはユーザーの対象範囲や使われ方も大きく変わる可能性が高まっている。「誰にでも使いやすいデザイン」というノーマン氏の主張は、従来にも増して重要になってきているのである。

「The Design of Everyday Things」のUdacityでの講義は、2013年10月時点では「Starts Soon」となっているが、受講登録しておけば開講を知らせてくれる。9月下旬に『GigaOM』に掲載されていたインタビュー記事（※7）によると、同講義への登録者はすでに2万5000人以上に上り、開講時には改訂版も発行されるという。

1935年生まれで現在77歳というノーマン氏の教えが、はたして今の時代にどこまで有効か、といった懸念がないわけでもない。ただし先のインタビューによれば、氏自身がスマートフォン用のOSやアプリケーション、さらにはGoogle Glassなどのデザインについて語っているというのだ。その内容が今でも通用するか、少々批判的に吟味しながら受講するとより面白いかもしれない。