[経営者をその気にさせる―デジタル時代の基幹システム活用戦略]
経営管理をデジタル化するということ【第5回】
2017年12月22日(金)青柳 行浩(NTTデータ グローバルソリューションズ ビジネスイノベーション推進部 ビジネストランスフォーメーション室 室長)
企業のデジタル化により、PDCAサイクルにおけるCAを高速化/高精度化することが可能になる。今回は企業のデジタル化を有効に機能させるためにPDCAサイクルをどのように考えればいいか、そしてデジタル化された経営管理はどうあるべきかを考えてみたい。
Books(国内で発行され、現在入手可能な書籍を収録する書籍検索サイト)で、タイトルにPDCAを含む書籍を検索したところ45冊がヒットした、このうち2016年~2017年に発行されたものは18冊。ビジネス書が一番多いのはいうまでもないが、PDCAは、ゴルフの上達術、病院、介護、教育などにまで適用され、いまや何から何までPDCAになっている。以前に「全体最適」という言葉が流行したことがあったが、PDCAもこれと同じバズワードの仲間入りしてきている。
リアルタイム経営のためのPDCA
1950年代に作られたPDCAの考え方に基づいた経営管理は、グローバル化などの企業の範囲の拡大、競合会社との競争の激化や社会変化の速度アップに伴う経営スピードの加速に対しても、IT化による業務プロセスのQCDの向上により適用されてきた。しかし、現在のリアルタイムと呼ばれるくらいに更なる高速化を求められている経営スピードに対応するためには従来のPDCAの考え方では実現できない。
リアルタイム経営という言葉が世に広まってから久しい。しかし、リアルタイム経営をGoogleで検索すると、「リアルタイム経営を実現するために」、「リアルタイム経営管理の実践」、「リアルタイム経営基盤構築、実現」、「リアルタイム経営を支援する」などのキーワードがみつかるが、具体的にリアルタイム経営がどんな経営スタイルなのかをきちんと説明しているページはほとんどない。また、Wikipedia上で「リアルタイム経営」を検索しても見つからない。
もともとは1990年代にERPが登場してきたときに提唱された、「企業に内在する明細レベルの経営情報をリアルタイム(発生と同時)に統合システム(ERP)で集約し、それを参照・活用すること(経営の見える化をすること)により、適時に精度の高い経営判断を実現する」という概念のことを意味しているようだ。もっとも経営判断しただけでは企業業績へ貢献せず、その経営判断に沿った事業活動を実施できないと意味がない。
リアルタイム経営に対する現実感が低いのは、事業活動には必ずリードタイムが絡んでくるため、仮にリアルタイムに経営判断をしても、それを事業活動に即座に反映することができないからだ。経営判断を行ったとしても実際に事業活動に反映できるようになるには時間がかかり、その間に経営環境の変化が発生し、結果、いつまで経っても事業活動が経営環境の変化に追いつけない。
これは、アキレスと亀で有名なゼノンのパラドックスを思い起こさせる。アキレスと亀が競争をすることになり、アキレスは亀の100メートル後ろから追いかける。アキレスが亀のスタート地点に到達したときには亀は前に進んでいる。亀がいた地点にまた到達したときには、亀は更に前に進んでいる。亀が歩みを止めない限り、アキレスが亀に追いつくことはない。
(図1)ゼノンのパラドックス アキレスと亀拡大画像表示
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