「コラボレーションの重要性は高まる」─マイクロソフトのCIOに聞く、不況下のIT施策
2009年6月29日(月)CIO INSIGHT
不景気の下、限られたIT投資をいかに有効に使うべきか──。ユーザー企業のみならず、ベンダー企業のIT部門も、日々知恵を絞っている。ベンダーのCIO(最高情報責任者)は、この不景気をどう見て、どう対応しているのだろうか。CIO INSIGHTは、米マイクロソフトと米シスコシステムズのCIOにインタビューを試みた。興味深いのは、2人が共通してコラボレーションの重要性を指摘した点だ。(翻訳 : 古村 浩三)
CFO(最高財務責任者)からの予算への圧力は、日増しに高まる一方。社内を見渡せば遂行の危機に直面しているプロジェクトもある。今やCIOの役割そのものも再考され始めた。こうした中、苦痛を感じているITリーダーも多いだろう。しかし、「恐れることはない」と語るのは、マイクロソフトでCIOを務めるトニー・スコット氏だ。
スコット氏は、米ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーや米ゼネラルモーターズ(GM)、解熱鎮痛薬「バファリン」で有名な米製薬会社のブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)などでITとビジネスの領域でリーダーを歴任してきた。
彼の真意はこうだ。「CIOはここ数年間の予算削減の中で、IT部門だけでなく会社全体の生産性向上を任されてきた。そのため、他の経営幹部よりも不況を乗り切る力を持っているはずだ」─。
CIO INSIGHTでは、スコット氏へのインタビューを実施。ITだけでなく、経営幹部として様々な経験をしてきたスコット氏に、この不況下でCIOが成功するためのポイントを聞いた。
CIO INSIGHT:目下の経済状況について意見を聞くと、心配の色を見せないCIOが少なくない。
スコット氏:CIOは他の経営幹部に比べ、不況の乗り切り方をよく分かっているからだろう。多くのCIOは、ここ7、8年間にわたって、前年と同じ、あるいは削減された予算の中で何とかやってきた。生産性向上の方法も学んできたし、限られた予算の下で、自分たちの能力や機能性を高め続けてきた。
こういった姿勢は、一朝一夕に作り出せるものではない。問題解決への道筋を明確に立てる能力が必要となるからだ。景気後退によって、こういった考え方がますます必要になってきている。
CIOは現在、厳しい経済情勢に直面して、本当にこのプロジェクトを実行すべきなのか、自社のIT部門はうまくやり遂げられるのか、といった漠然とした不安を抱いているかもしれない。だが恐れることはない。今まで培ってきた能力を活かせば、ほとんどの場合うまくやれるものだ。
ITの世界には投資の波がある。湯水のように資金を投入できるときもあれば、財布の紐をびしっと締めなければならないときもある。だが、投資したものには、いつかは必ずリプレースの必要が生じる。
何よりも幸運なことに、インフラの再構築は、数年前に比べてずっと安価に実現できるようになった。多くの企業で01年から03年にかけて投資してきたITが、現在寿命を迎えようとしている。リプレースに伴い、システムの規模を拡大するにしても簡素化するにしても、コストは数年前の投資額のほんの一握り程度でまかなえる。コストが下がる一方で、機能強化できるのだ。これをチャンスと言わずしてなんと言う?
●Next:不況は自社の戦略を再評価する絶好の機会
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