企業内に溢れるハードウェアやソフトウェア。これらすべてを人手で管理するのは事実上不可能だ。遊休資産を多く抱えれば余計な保守費用の発生にもつながりかねない。そこで注目すべきなのが、社内のIT環境の実態を見える化するIT資産管理ツールだ。
大企業が導入するPCやサーバーは数千〜数万台に及ぶ。ソフトウェアの数はそれ以上で、しかも部門や個人単位でバラバラに契約するケースもある。そのすべてを人手で管理するのは不可能に近い。きちんとした管理体制がなければ、購入後まったく使っていないソフトウェアやPCを放置することにもつながる。そこにはライセンスや保守サポート費用が余計にかかっているかもしれない。こうした無駄を効率的にあぶり出す上で威力を発揮するのが、企業内に散在するIT資産の現状を見える化するIT資産管理ツールだ。
コンプライアンス対策で脚光、ライセンス違反の防止にも有効
長い間使われていないソフトウェアやPCは、システムへの不正侵入の足がかりとなることもある。IT資産管理ツールはこうした遊休資産の状況を把握できることから、2005年4月施行の個人情報保護法や、2008年4月開始のJ-SOXなどのコンプライアンスへの対応で導入に弾みがついた。
個人情報保護法の施行時に大企業などがこぞって導入したIT資産管理ツールは、それから5年が経過し、更新の時期を迎えている。このサイクルに合わせ、各ベンダーは製品の機能拡張に力を注ぐ。ここにきて管理対象を広げたり、収集した情報の積極活用を支援する機能やサービスを用意する動きが活発だ。
最近ではソフトウェアライセンスの不正使用防止目的での引き合いも強くなっているという。2009年11月、北海道庁がMicrosoft Officeをはじめとするソフトウェアを約4650本違法コピーしていたことが発覚し、マイクロソフトに1億4000万円もの違約金を支払った。この件に限らず、主要ベンダーは企業のソフトウェアライセンス管理体制のチェックを強化している。
たとえ適切にソフトウェアを購入・使用しているつもりでも、手作業での管理では抜けや漏れが発生する可能性を否定できない。IT資産管理ツールでソフトウェア資産状況を管理していれば、そういったリスクを最小限に抑えられ、監査時にも迅速に書類を提出できる。
実態の把握と契約情報の管理で無駄なITコストをあぶり出す
「IT資産管理ツール」と銘打つ製品は多く、機能も幅広い。その中でもITコスト削減に直結する主要機能は、(1)インベントリ収集機能と(2)契約情報管理機能の2つだ。
(1)はPCやサーバーなどのハードウェアやインストールされたソフトウェア情報を自動収集して台帳化する機能。PCやサーバーに導入したエージェントが情報を収集し、管理サーバーに定期的に通知する。収集できる情報はハードウェアではシリアル番号やメモリー容量、IPアドレスなど。ソフトウェアでは名称のほか、稼働時間や利用率といった情報を取得できる。
エージェントがインストールできないルーターやプリンタなどのネットワーク機器は、SNMPをはじめとするシステム監視の仕組みを利用して情報を収集する。いずれの手段でも情報を取得できない機器については、管理の自動化対象からは外れるものの手入力での管理を可能としている製品が多い。収集した情報は画面上で一覧表示したり、レポートとして出力できる。
一方の(2)は、ソフトウェアライセンスや保守、リース契約などといった契約内容を一元管理する機能。ExcelなどからのCSV形式でのインポートや手入力などで、IT資産のライセンスや保守といった契約情報を入力して管理する。(1)のみ、(2)のみの機能に特化した製品も存在するが、最近では統合化が進み、双方の機能を搭載したり、APIやCSVファイルを通じた連携が可能になっている製品も多い(カコミ記事参照)。この組み合わせにより、使用していないIT資産を把握したり、契約ライセンスを超えてソフトウェアを使用している場合にアラートを発するといった運用が可能になる。
そのほか多くの製品が搭載するのがソフトウェアやセキュリティパッチの配布機能だ。この場合、エージェントのインストールも自動化できる。ソフトウェアの配布は台数が増えるほどネットワークへの帯域に負荷がかかる。各社は中継サーバーの設置や配布スケジュールの調整などで負荷分散する仕組みを用意している。
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