前回は、自宅のHDDレコーダー「VARDIA RD-X8」に対して、外出先の携帯電話(iPhone)からメールで番組録画予約する方法について書きました。ここで、レコーダー本体の電源がOFFの状態では、3時間に1度しか予約メールをチェックしてくれないという問題に直面。電源さえ入っていれば(設定によって)1時間に4回は受信してくれるのに……。ならば、WOL(Wake On LAN)を使って、iPhoneからHDDレコーダーの電源を投入してしまおう、と企んだ次第です。
iPhoneアプリを調べたところ、「RemoteBoot Lite」や「iWOL」などのWOL用ソフトがあることが判明。早速インストールして、まずは自宅のLAN環境で試してみました。RD-X8のMACアドレスを調べてRemoteBootに設定し、いざマジックパケットを送出してみると……。狙い通りに電源が入りました。これだったら外出先からも何とかなる、と期待が高まります。WAN側から見ると、自宅LAN環境との間にルーターが存在しますが、(1)ルーターのポートフォワーディング設定、もしくは、(2)PPTPによるVPN接続、のいずれかでうまくいくはず。しかし、これが思った通りに動作してくれないのです。なぜ?
まず、(1)のポートフォワーディング。ルーターのWAN側のグローバルIPアドレス(設定した特定ポート)に届いたマジックパケットを、RD-X8のプライベートアドレスに転送すればOKだと思っていたのに、結果は失敗。ルーターは、LAN上の機器のMACアドレスとIPドレスの対応表をキャッシュして保持するはずだけど、機器(この場合、HDDレコーダー)の電源が切れた後、一定時間が経過するとクリアしてしまうらしい!? ならば転送先をブロードキャストアドレス(例:192.168.xx.255)にすればいいのでは。しかし、セキュリティの観点から、我が家のルーターは、そもそもブロードキャストアドレスへのポートフォワーディングを設定できない仕様になっている。ううむ。
次に(2)のVPN接続。iPhoneにはPPTPなどでVPN接続する機能が備わっているので、ここに自宅ルーターへのリモートアクセスの設定を済ませておきます(自宅ルーターがVPN接続に対応している必要があります)。実際にやってみると接続は簡単で、iPhoneアプリ「Ping Lite」などでPingコマンドを送ってみると、外出先でも自宅のNASなどから反応が返ってきます。この状態ならiPhoneに自宅LANのプライベートアドレスが振られているはずだから、WOLも問題ないはず。でもこれが、あえなく失敗。どうやら、これも仕様上の問題で、VPN接続といえどWAN側からのダイレクトブロードキャストはブロックされる様子。残念。
何か解決策がないものかとネットを探していると、「Wake On LANリピータ」という面白い製品を見つけました。これは、常時電源ONの状態でLANに接続しておく小型装置で、固定のプライベートIPアドレス(192.168.xx.125など)を保持しています。ポートフォワーディングによるルーター越えで、このリピーター宛てにマジックパケットを送ると、LAN内にブロードキャスト転送してくれるのです(ほかにも本機のメニューにブラウザからアクセスしてマジックパケットを送出する機能もある)。導入してみたところ、これが万事解決。iPhoneでRD-X8の電源をリモート投入するという目的をやっと達することができました。WOLリピーターは、もちろん自宅のPCの電源を入れるといった用途にも使え、今後も重宝しそうな製品です。
ちなみに今回は携帯電話(iPhone)からの電源投入にこだわりましたが、PCからリモートでHDDレコーダーの電源を入れるなら、本コラムの第6回で触れたように、ルーター「BHR-4RV」の本体に備わるマジックパケット送出機能を使った方が手軽だし、確実というのが率直な印象です。
さてさて、3回にわたって、外出先からの番組録画予約のあれこれを紹介してきました。想定されるいろいろなシーンに対応しようと環境を整えたつもりではありますが、こんなことをしているうちに、番組放映予定をこまめにチェックする習慣がついてしまった私。自宅にいるうちに予約を済ませることがほとんどで、「リモート予約」の出番がなかなかありません。まぁ、「いざというときに役立つかも」と考えて、あれこれ準備をするのが楽しいのではありますが…。周囲は「それって、エネルギーの費やしどころが間違っているのでは?」と冷たい視線を投げかけてきます。
- 「もの忘れ常習者の神アプリ」の巻:第29回(2011/02/09)
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